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第81話 凍夜の母

 そんなわけで山川家を訪ねて来た。 「ただいま! 俺の大切なパートナーを連れて来たよ。」  大きなお屋敷の奥の間に通された。 「いらっしゃい、よく来てくれたわね。」  凍夜の母は、顔は凍夜そっくり、美人だった。 凍夜より20kgくらい体重が多そうだったが。 「母さん、俺の嫁だ。」 「初めまして。柳奥命(りゅうおくみこと) と申します。」  重量級の凍夜の母親は、ミコトを思い切り抱きしめた。 (うっ、苦しい。なんだこの人?) 「ミコトちゃん、可愛いわ。 一目で好きになった。 凍夜の愛する人は、私も愛する人よ。」 そう言ってミコトを離さない。 「おふくろ、気に入ってくれた? 俺の最愛のパートナー、ミコトだよ。」  凍夜の母は両手にそれぞれ凍夜とミコトを抱いてソファから動かない。 「嬉しいわ。 凍夜が愛する人を連れて来てくれて。   結婚式はどうする?新居は? 私は邪魔しないわよ。二人だけの愛の巣を建てましょうか?」 (なんだか、話が急で目が回りそうだ。) ミコトは理解が追いつかない。自分が男である事で、大波乱が起こると覚悟して来たのだ。  凍夜の母がこんなキャラだとは思いもしなかった。 「ちょっとまって、おふくろ。 ミコトが男だってわかってるか? いいのか?俺たち同性愛だぞ。」  凍夜の母はクスッと笑って 「凍夜ってば頭が硬いのね。 凍夜が誰かを家に連れてくるなんて初めてでしょ。よっぽど覚悟して来たのね、二人とも。」  ミコトはこの状況を信じていいのか、後で引き裂かれる、なんて事はないんだろうか?と不安になって来た。  この母親はどういう人なんだろう。第一印象は悪い人では無い、と感じた。  その後、この印象は間違ってなかった,と信じられる。しばらく付き合って見ると、天真爛漫で明るくて、裏表の無い人だとわかって来た。

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