92 / 101
第92話 実の父の足取り
「ひでぇ話だな。
ミコトもおふくろさんも、なんか罠にかかったみたいじゃねぇ?」
このごろの凍夜はヤンチャな悪ガキみたいで、新鮮でミコトは好きなタイプだ。
あの颯爽とした上品なホスト、の顔も好きだが、ガキっぽい凍夜もたまらない魅力がある。
キースの調査でようやく、少し事実が見えてきそうだ。
男はかなり会社を私物化していたようで、調べると脱法行為スレスレの案件がボロボロ出てくる。
「横領罪、偽証罪、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、出るわ出るわ、かなりの大問題ですね。
小児性愛の録画や写真も押収されたようです。」
弁護士が呆れていた。盗撮の罪もある。
「こいつ、会社では、横領。
それから小児性愛、児童ポルノ所持。
多趣味な人だなぁ,笑っちゃうな。
職業を間違えたか?」
キースと凍夜も呆れている。
実の父親探し。
もう15年も前の話だ。覚えている人も少ないだろう。戸籍上は死者になっている。
不審死や行旅死亡人の可能性を、キースの弁護士が地元警察に当たってくれている。
「探偵とか雇った方がいいかもな。」
素人の手には、危険すぎる。
キースと凍夜は、最悪の結果を危惧していた。
ミコトの父親の足取りの途絶えた所から、聞き込みが始まった。
微かに覚えている人がいた。何しろ15年も経っている。
この山の麓で長く温泉宿を経営しているというお年寄りが話してくれた。
「ああ,あの人の事は覚えている。
一晩泊まって出て行ったよ。
暗い顔してたから心配だったが、後から友達って人が来て、一緒に四度小屋に行くって言うので安心したのを覚えている。
その後、帰って来ないのかい?」
後から来た友達は山に慣れているようで、熟練の装備だったが、父らしき人は、本格的な装備が全部新品で、あんな都会的な人が山登りに行くのか?って首かしげて見送った,と言う。
四度小屋までならあんな重装備はいらないが、その先だと本格的な登山になるらしい。素人には難しいが、大丈夫だろうか?
そんな不安を感じて覚えていたそうだ。
ともだちにシェアしよう!