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第96話 その後

 いったん家に帰って来た。キースが報告がある、とマンションにやって来た。 「山はどうだった? おまえ等から連絡があったから、あの小屋のおっさんについて調べて見た。 驚く事がわかったよ。」  あのおっさんは、なんと父の会社の元社員だった。今ではあの小屋に住み着いて名前も”ほーぼー’とか名乗っている。  会社員の鈴木康夫という。年令は45才。15年前に退職するまでミコトの父の部下だった。  山が好きでよく登山をしていた。北関東の山々は庭だ、と言っていたらしい。  あの頃の父は、疲れていたから、温泉に誘ってくれたのか?  裏であの義父が仕組んだ事なのかもしれない。 あの男が、まだミコトの義父になってはいない頃だったが。  その頃から用意周到に仕組んでいたのだろう。 見かけた事のあるミコトの母親に横恋慕していたようだ。暴露された性癖を思うと、ミコトにも興味があっただろう。 「当時の事は部外者にはよくわからない。 ただあのおっさんには借金があって、上司のあの男に弱みを握られていたようだ。  あのおっさんも、やっぱり変態だ。小児性愛で何度か警察に捕まっている。  そんな奴が企業に就職出来たのも、あの義父が手をまわしたのだろう。想像に固く無い。  警察では要注意人物としてマークされていた。」  もう時効かもしれない。もしかして鈴木が父を殺したとしても証拠は残っていない。  父はテントの中で一酸化炭素中毒死だった。 たとえ、鈴木が手を下したとしても証拠はない。  ミコトは、3人で話し合って弁護士を通じて警察に鈴木を通報した。探せば何かボロを出すだろう、とのキースの読み、だった。  後日、警察があの小屋に踏み込んで、様々なモノを押収したらしい。  児童ポルノのおぞましい写真の中にミコトの5才くらいの時の裸が混じっていた。 あの義父が与えたのか?  その他、父の登山用品も全部自分のモノにしていたようだ。  最後を看取ったからか、その手で殺したからか?  謎は謎のままだ。  また数日経って、キースが弁護士の報告書を持って来た。 「もっと食い下がればあの義父を殺人教唆で立件できるかもしれない。  終身刑にはしたいなぁ。」 「日本には終身刑は無いよ。 無期懲役だって、実際は無期じゃない。  仮釈放があるからな。」 ここまで来ると[悪魔の証明]になってしまう。時が経ち過ぎた。殺人に時効はないが。  義父は会社を馘首され、その上、訴訟を起こされた。会社に与えた莫大な損失。  おぞましい性癖を社員に強要した罪もあるらしい。会社の信用を貶めた賠償も。  引き続き係争中のようだ。義父の身柄は、小児性愛,その他の罪状で勾留中である。  ミコトの母は、度重なる暴力を受けていた事で 婚姻関係無効の訴えが認められた。  晴れて離婚出来た母を、凍夜とミコトはあのマンションに迎えた。

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