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第97話 凍夜の部屋

「ミコトのお母さんに俺のおふくろを紹介したいんだ。」  あの山川家のお屋敷にやって来た。  ミコトの母は、大きなお屋敷に初めは気圧されたようだったが、初めて会う凍夜のおふくろさんの気さくさに、すぐに打ち解けた様だ。  何だか話が弾んでいる。 「初めまして。ミコトの母でございます。 この度は、私が離婚した事で、 凍夜さんのマンションにお世話になって、 親子共々恐縮しております。」 「まあまあ、固いこと言わないで。 ミコトちゃんが大好きなのよ。 ミコトちゃんを生んでくれたあなたに感謝してます。」 「まあ・・ありがたいお言葉。」  人見知りのミコトの母が饒舌になっている。 「ミコト、俺の部屋に行こう。」 「えっ、凍夜の部屋があるの?」 「高校くらいまで使ってた部屋だ。 誰も入れた事はないけど、まだそのままになってるよ。」  お屋敷の奥に離れのような二間続きの部屋があった。十畳くらいの、一つは洋間、もう一つは和室のようだ。襖で分けられている。  凍夜の机があった。10年くらい前まで使っていたのだろう。 「時々帰って来て掃除もする。 結構きれいだろ。あ、隅の方は見るなよ。 おまえ、小姑か?」 「あはは、見えるとこだけ掃除する凍夜って なんだか男らしい!」 「言葉の使い方が変だぞ。」  凍夜がミコトの手を取ってあいだの襖を開けた。 「わあ、和室だね、意外だ。」 「俺は畳の上でゴロンと寝っ転がるのが好きなんだよ。マンションに和室がないのはつまらないな。」  布団が敷いてある。 何故か、きちんと敷かれた布団。 乱れていない。 と、凍夜が布団にミコトを押し倒した。 「何するんだよ。」 上に乗った凍夜が、激しいくちづけをする。 舌を絡ませて久しぶりの激しいキス。 「あ、ん、ああ、凍夜。」 「ミコト、この部屋で抱くのはおまえだけ。 愛してるよ。」  しばらく、貪るようなキスをした。 「高校生の頃はここに女の子連れ込んだの?」 「バカ、ウチのおふくろは厳しいんだよ。 認めていない恋人は家に入れない。  番頭の斎藤さんが見張ってるんだよ。 おふくろが認めたのはミコトだけだ。」 「それじゃ、いつもはラブホか彼女の家か。」 「ジェラシー? おまえ、そんな奴だったの?」 「ヤキモチじゃ無いよ。 高校生の凍夜は、きっとカッコよかったなぁ、って思った。 その頃の凍夜に会いたかったな、って思っただけ。」 「可愛い事言うなぁ。襲っちゃおうかな。」 「あん、やめて!」 「可愛い可愛い。お尻触らせて」 「ヤダよ。落ち着かないよ。凍夜のバカ。」

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