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第103話 モテ男凍夜
今でもミコトの送り迎えは凍夜の仕事だ。
ホストは狼の群れに恋人を放り込むような事だろうか?
早く辞めさせたいがミコトは社会勉強だと言う。
凍夜が迎えにくるとお客さんに見つかってアフターに誘われる。
「おれ、ホストじゃないんで。」
やんわりと断る。
その夜は、下の階のキャバクラ『アンジー』の嬢たちが来ていた。休みなのか?
「凍夜!凍夜がいる!」
もう大騒ぎになった。アンジーの売れっ子マリアが凍夜を見つけた。
「このまま帰さないわよ!」
凍夜には過去にアンジーのほとんどの嬢と寝た、という武勇伝がある。鬼枕と揶揄されたりした。気にしない。凍夜は絶倫?
セックスさえもスマートで粋だ。今でも凍夜に未練がある嬢がたくさんいる。
あの事件以来、なし崩し的にホストを辞めた凍夜に、まだ未練を残している。
あの事件とは?
凍夜が作家の高田凪に刺されそうになった事件。
誤って別のホスト、ショーン・ロビンズにナイフが刺さってしまった事件だ。
今は凪とショーンは結婚して二児の親になっている。
ショーンは惜しまれながらもホストを辞め親の会社でサラリーマンをやっている。
「凍夜を諦めきれない。」
未だにそんな事を言われる。
「アフター行こう!」
女の子たちが群がって他のお客の迷惑になった。
そこに颯爽と、太客のマダムヒロコがやって来た。見送りに来た社長の円城寺が
「凍夜、付き合えよ。
マダムヒロコが誘ってくださる。
ご一緒したらどうだ?」
従業員でもない凍夜に図々しいのは、いかにも円城寺らしい。
「ミコトも一緒なら。」
「いいわよ、ミコトちゃんもどうぞ。
可愛いわね。凍夜の大切な人?」
世界的な文豪の妻だったマダムヒロコは色々な事を経験している。ゲイの男にも理解がある。
文豪はゲイだったのだ。
「みんな解散解散!」
円城寺が嬢たちを帰した。
マダムヒロコの運転手付きのジャガーに乗り合わせて『バー高任』に行った。
『バー高任』はレオンの彼がやっているバーだ。ここにも数々のドラマがあった。
イケメンのサムライ、マスターの高任傑が出迎えてくれた。
レオンも嬉しそうに飛んで来た。
週に3日しかディアボラに来ないレオンだが、今もナンバーワンの売り上げを誇る。
礼於と傑、ミコトの憧れるカップルだ。
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