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第104話 おとな
「いらっしゃい。マダム、珍しい人を連れて来てくれた。凍夜、久しぶりだね。」
レオンは凍夜がホストの頃、一緒に店にいた。
ホストの凍夜を知っている。
凍夜は女好きだと言われていた。その甘いマスク。綺麗な身体。女性ならみんな凍夜に抱かれたくなる。声も素敵だ。
作家の徳田凪も凍夜の魅力に絡め取られて事件を起こした。
ディアボラは何より品位を重んじる店ではある。ホストに枕営業をさせたりはしない。
ホストになりたての頃レオンは円城寺のマンションに住む事になった。そこで円城寺の毒牙にかかる。
超がつく美形のレオンを囲い込む。色々なえげつないおもちゃを使った。一晩中後孔にビーズを入れられた。帰って来ると点検が始まる。アナルビーズに慣れる事はない。屈辱だった。
思い切って逃げた。バー高任、に逃げ込んだ。
事情を知った傑の尽力でなんとか円城寺から逃れた。今でも円城寺の事は信用できない。
若い頃の円城寺は新宿で家出娘を売り飛ばすヤクザの手先だった事がある。
仲間で彼氏だった男がチンピラに刺されて死んだ事で、悪事からは手を引いた。自分も殺されそうになって六本木に流れて来た。
反社に付け入れられ、上条不動産社長の菫ちゃんに拾われた。ディアボラを始めたのは円城寺だったから、傾いてはいたが、菫ちゃんが立て直して社長にしてくれた。以前のような反社の出入りする店ではない。徹底的に浄化し、叩き潰した。
円城寺は菫ちゃんを恐れている。そして一目置いている。
今は従業員には手を付けない。分別はある。
レオンは円城寺に酷い事をされたが、心までは無くさなかった。
「傑が愛してくれたから。
僕は枕営業なんて絶対に嫌だ。」
ディアボラはそんな店ではない。自由恋愛は認められるが、強制ではない。
売上のために客とするセックスは御法度だ。
「凍夜は売り上げなんか気にしない。
抱いてくれたらラッキーって事。」
無理に太客にならなくても、気が向けば抱いてもらえる。それが凍夜のモテる秘訣かもしれない。女性に恥をかかせない。
凍夜の鉄則だった。みんなが惚れてしまう。
「どうして姫に手を出すのを止めたの?」
「ミコトと出会ったからさ。他の人は触れなくなった。ミコトだけ。」
隣でミコトが真っ赤な顔をしている。
「ディアボラはゲイが多いね。
だから、身持ちが硬いんだね。」
ディアボラはホストクラブとしては異色の存在かもしれない。その中でも凍夜は特別な男だった。
その凍夜が恋に落ちるとは。
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