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第16話

 長かった舞台公演も大千穐楽。それが終わるなり、ラスティは打ち上げにも参加せずに久秀の元へ向かった。  久秀はすでに退院しており、現在は自宅マンションで療養しているそうだ。  エントランスにてインターフォンを鳴らすと、少し間が空いて応答があった。 『はい』 「久秀さん!」 『ラスティ? どうした、急に。お前、今日千穐楽だったろ』 「せやから久秀さんに会いにきた!」 『……ちょっと待ってろ』  そういうとオートロックのドアが開かれる。ラスティはドキドキしながらエレベーターで久秀の部屋があるフロアまで上がっていった。  久秀の家の前まで来ると、鍵を開ける音がしたのでそのまま中に入る。すると玄関に久秀が立っており、ラスティを見るなり苦笑した。 「お前なぁ……打ち上げとかちゃんと出たんだろうな」 「いや、それどころやなくて」 「バカ野郎。そういうのにはちゃんと出ないとダメだろ」  そう窘められてラスティはしゅんとなる。一刻も早く久秀に会いたかったのだ。会ってどうしたい、ということはないが、とにかく顔を見たかった。  しょんぼりしてしまったラスティに、久秀は困ったように笑って家のなかに招き入れる。  骨はあらかたくっついたと言っても松葉杖は手放せないようで、左足を引きずるようにして歩く様が痛々しい。それだけで、ラスティの胸はぎゅっと締め付けられた。 「ラスティ、どうしたんだよ。そんな泣きそうな顔して」  ソファに座るよう促されて座ったが、久秀にそう言われてはっとした。どうやらよほど情けない顔をしていたらしい。 「ごめんな、久秀さん」 「ん?」 「怪我させちゃって。ごめんなさい」  しゅんとするラスティに、久秀は苦笑する。 「お前が悪いんじゃないんだから謝るなよ。それにもうほとんど治ってるし、大丈夫だよ」  そう言って優しく頭を撫でられるが、ラスティはそれでも納得できなかった。自分がもっとしっかりしていれば、久秀を傷付けることはなかったのだ。  そう思うと悔しかったし、申し訳なかった。 「でも……オレがちゃんとしてたら……」 「はいはい。でもでもだってタイムはおしまい。てゆーか、俺が退院したっつーのに、おめでとうも無し? 退院祝いとか期待してたんだけどなぁ」  わざと拗ねたように唇を尖らせてそう言う久秀。ラスティがしゅんとしているといつもこうして空気を和らげてくれる。 「あ……えっと、退院おめでとう」  ラスティはたどたどしくもお祝いの言葉を口にする。久秀はそれを聞くと満足そうに頷いた。 「ありがとう、ラスティ」  久秀に肩を抱かれる。引き寄せられると自然に二人の距離が縮まった。どちらからともなく唇を合わせる。少し長めのキスを交わしたあと、見つめ合ってくすくすと笑った。 「久秀さん、好き」 「俺もだよ。愛してる」  甘い愛の言葉に、ラスティはきゅんとときめいた。久秀の首に腕を絡ませ、もう一度キスをする。そしてまた見つめ合って笑い合った。 「幸せ……」  思わずそう呟くと、今度は久秀からキスをされる。そのままソファに押し倒され、ラスティは内心ドキドキした。  このまま抱かれてしまうのだろうか。それならそれで嬉しい気もするが、久秀の体はまだ完全に治ったわけではない。無理をさせるわけにはいかないだろう。 「久秀さん、あの……」 「ん?」 「えっと、その……今日は……」 「……ああ。しないよ」  久秀はそう言うとラ起き上がってスティから体を離した。 「え、あの……なんで……?」  てっきりそういう流れになると思っていたので拍子抜けする。しかし久秀はそんなラスティをおかしそうに笑った。 「あのなぁ、ヤるにしても準備ってもんがあるんだよ。お前、なんもしてきてないだろ」  準備、とラスティは言葉をオウム返しに問う。 「男同士のセックスってな、いろいろ大変なんだぞ。特に受け入れる側は」 「そ……そうなん?」 「そうなんです。だから、ちゃんと準備をしないとダメなんだ」  久秀は頷きながら言って、ラスティを引き起こす。 「まず、腸内洗浄はマストだな。これは絶対やらないとダメ。あとは、前日は固形物を食べないとかな。それから……」 「ちょっ、ちょっと待って。オレそこまでするん?」  つらつらと語られる手順にラスティは頭がくらくらとした。聞いているだけで恥ずかしいような気持ちになるし、そもそも抱かれる側の自分がそんなことまでしなければならないのだろうか。疑問ばかりが浮かんでくる。 「なんだよ、調べたんじゃないのか?」 「調べはしたけど……」  確かに調べた。しかし、それもアダルトな映像だけでの知識だ。事前準備が必要なことなど知らなかった。  そのことを素直に申告すると、久秀は呆れたようなため息をもらした。 「どこに挿入すると思ってんだ? ちゃんと準備しないと、お互いが嫌な思いするんだぞ。それに、ああいうのはプレイがメインだから事前準備なんて撮影前に済ませてるだろ」 「う、うん」 「それに、あの人たちはプロだからすぐ挿入できてるけど、まるっきり処女のお前にはそれは無理だ。ましてや、俺のサイズはすぐに入らないぞ」  久秀はそういうとラスティの手を己の股間へと導いた。スウェット越しでもわかるほどのモノがそこにはあった。  平常時でこのサイズなのだから、勃起したらどうなるのだろうか。  それを想像すると途端に恥ずかしくなり、首まで真っ赤にしてラスティは俯く。 「ごめん、久秀さん……オレ……」 「別に怒ってるわけじゃないよ。ただな、ちゃんとお前に気持ち良くなってもらいたいんだ」  優しく宥められて、ラスティはこくりと頷く。  妄想のなかでは、ちゃんとできていた。ただ、現実というものは妄想よりは厳しくて、そう簡単にこの大好きな人とのセックスはできないのだと実感した。 「ま、セックスは別の日にしよう。それにお前、今日は千穐楽だったんだからさ。疲れてたんじゃ、楽しめるもんも楽しめないよ」 「……はい」 「いい子だ。じゃ、ちょっと一杯やるか……」  そう言って久秀が立ち上がった瞬間、ラスティは彼の背に抱き付いた。 「おっと」  そのまま背中にぐりぐりと額を押し付ける。その行為に愛情表現以外の意図はないのだが、そうとは知らない久秀は苦笑をもらした。 「どうした?」 「あ……えっと」  言葉に詰まってしまう。したいとかしたくないとかそういう問題ではなくて、ただ今は久秀に触れていたいという気持ちが強かったのだ。 「まったく、しょうがないやつだな」  久秀は苦笑すると、くるりと振り返って正面から抱きしめた。それからそっと顔を近付けると、ちゅっと音を立ててキスをする。  唇を離すと今度はおでこにキスをし、次にほっぺたにもキスをした。そしてもう一度唇に口づける。  舌を差し入れてやれば、ラスティもそれに応えるように自分の舌を絡めてきた。ぴちゃぴちゃという水音が室内に響き、二人の興奮を煽った。 「はぁ……ん……」  ゆっくりと唇が離れれば唾液が伝う。それすらももったいなくて、ラスティはもう一度久秀にキスをする。そして今度は彼の首に腕を回して抱きついた。 「こら、ラスティ」  久秀はそう言いながらもラスティを優しく抱き止め、その背中をぽんぽんと叩く。まるで子ども扱いだ。いつもならムッとするところだが、今はこうして甘えていたい気分だった。 「久秀さん、好き」  そう囁くと、彼は無言でラスティの頭を撫でた。それが嬉しくてさらにぎゅっと強く抱き付く。すると久秀は困ったように笑って言った。 「お前、今日は甘えんぼうだな」 「……あかん?」 「いや? そんなお前も可愛いから大歓迎だよ」  そう言ってまたキスをしてくれる。今度は触れるだけの優しいものだ。しかし、それだけでも十分すぎるほど幸せで、ラスティの胸はきゅんとときめいたのだった 「久秀さん」 「今度はどうした?」 「やっぱり、エッチしたい……」 「今日は無理だなぁ」  どう粘っても、久秀は首を縦に振ろうとはしなかった。しかし、そこでラスティはいつか友人に言われたことをふと思い出す。 「なぁ、エッチは無理でも、その、フェラとかじゃアカン?」 「……お前、それは」  分かりやすく久秀が動揺する。 「アカンかな?」 「いや……ダメっつーか……」  久秀は困ったように視線を泳がせる。彼が戸惑っているのはラスティにも分かったが、それでも引く気はなかった。  やはり大好きな人とセックスしたいという気持ちが大きいし、なにより男として恋人を気持ち良くしてあげたいという気持ちもあったからだ。  それに何より、自分も気持ちよくなりたいのである。 「……わかった。いいよ」  しばらく考え込んでいた久秀だったが、やがて観念したように頷いた。その答えに、ラスティはぱぁっと顔を輝かせる。 「ありがとう、久秀さん!」  そう言って再び抱き付くと、久秀は苦笑しながらラスティの背中をぽんぽんと叩いた。 「でもな、無理はするなよ?」 「うん」 「じゃあ、場所変えようか」  久秀は松葉杖を操りながら、寝室として使っている部屋へラスティを導く。  寝室に入るなり久秀の匂いを感じ、ラスティはドキッとした。彼の香水の匂い、芳香剤の匂い、タバコのにおい、彼自身の匂い。そのどれもが混ざり合い、久秀に匂いとしてラスティの鼻孔をくすぐる。 「散らかってて悪いね」  久秀はそう言って苦笑するが、ラスティはむしろその乱雑な部屋が好きだった。彼の生活の一部を覗き見たような気がしてドキドキするからだ。 「ほら、ベッドの上に乗って」  言われるまま、寝起きのあとが残るベッドに登る。久秀も同じようにベッドに登って、ラスティの顔を見つめた。 「足、降ろしてたほうが楽だからさ」  久秀は両足をベッドから降ろし、上体だけひねった体勢をとっている。 「そ、それやったら、オレが下でやったほうがええ?」 「ん? お前はしなくていいよ。俺がするから」  さも当然のことかのように言って、久秀はラスティのジーンズのベルトを外す。ファスナーを降ろして、手慣れた様子でジーンズも脱がしてしまった。 「えっ、ちょ、久秀さん!」  流れるようにボクサーパンツも脱がされてしまい、下半身は生まれたままの姿になる。  股間を手で隠そうとすると、久秀に制されてしまった。 「手、邪魔だから退かして」 「でも……」 「いいから。ほら、早く」  優しくも厳しい声に逆らえず、ラスティは渋々と股間を隠していた手をどける。すると久秀は満足そうに笑って、その中心に手を伸ばした。  まだ柔らかいそれを手で包み込み、ゆっくりと上下に擦る。最初は優しく撫でるような動きだったのが次第に強くなり始め、ラスティの息も上がってきた。しかしそれでも決定的な刺激にはならず、もどかしい気持ちだけが募る。 「……なぁ、お前って、ハイジニーナ?」 「そ、そうやけど」  ハイジニーナとは、陰毛を全て脱毛している人のことを指す。  ラスティの股間には陰毛がほとんど生えていない。元々体毛が薄いほうではあるが、何もしていないのにここまで薄いということはないので脱毛しているということになる。 「へぇ。アンダーヘアの手入れしてる人は見たことあるけど、マジのハイジニーナって初めてだ」  手の動きをやめて、まじまじと股間を凝視する。 「あ……あんま見んといて」 「なんで? 可愛いよ、ラスティのココ」  久秀はそう言うと、ぱくっとラスティのそれを口に含んだ。その瞬間、今までとは比べ物にならないほどの快感が襲ってくる。 「ああっ! く、久秀さっ……あぅ……」  思わず腰を引くが、久秀の腕がしっかりとホールドしているため逃げることは叶わなかった。  それどころかさらに深くまで咥え込まれてしまい、あまりの気持ちよさに頭がくらくらする。 「あっ、あかんって……そんなしたらすぐイッてまうからぁっ」  しかし久秀は口を離そうとはせず、それどころかラスティの反応を楽しむかのように強く吸い上げてきた。 「ひあぁっ!」  思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を塞ぐが時すでに遅しである。久秀はニヤリと笑うとさらに強く刺激を与え始めた。 「んぁっ! ひっ、あっ……くぅぅっ……」  あまりの快感に頭が真っ白になる。もう何も考えられないほど気持ち良くて、無意識のうちに腰が動いてしまっていた。  そんな様子に気が付いたのか、久秀はさらに追い打ちをかけるようにしてラスティのものを貪った。 「あっ、もうイクっ……くひっ! ああぁっ!!」  絶頂を迎えた瞬間、頭が真っ白になるほどの快感に襲われて目の前がチカチカとする。  久秀はラスティのものを口に含んだまま嚥下すると、今度は喉の奥で締め付けるようにして吸い上げてきた。その刺激にまた軽く達してしまい、腰ががくがくと震える。  ようやく口を離したかと思うと、久秀は満足そうな笑みを浮かべて言った。 「いっぱい出たな」  そう言って、口の周りをぺろりと舐める。その仕草にすら興奮してしまい、ラスティはごくりと喉を鳴らした。 「久秀さん……オレ……」  物欲しそうな視線を向けると、久秀は小さく笑って言った。 「ん?」 「オレ……もぉ……我慢できへん」  切なげに眉を寄せるラスティの頬を優しく撫でると、久秀はそっと唇を重ねてきた。  最初は軽く触れるだけのキスだったが、次第に深いものへと変わっていく。舌を差し入れられ、絡め取られるようにして吸われれば頭がくらくらとした。 「はぁ……久秀さん……」  キスの合間に名前を呼べば、彼は優しい笑みを浮かべて応えてくれる。  しばらくお互いの口内を貪り合った後、ようやく唇が離れると糸を引いた唾液がぷつりと切れた。 「久秀さんのも……する」 「いいの?」  久秀はそう言ってスウェットを脱ぐと、ボクサーパンツ越しにも分かるほど勃起しているのが分かった。  ラスティはごくりと生唾を飲み込むと、おそるおそるといった様子でボクサーパンツの中からそれを引き出す。 「あ……」  ボロンと勢いよく飛び出してきたそれは、すでに完全に勃起しており血管が浮き上がっていた。  自分のものより圧倒的に大きく太い陰茎に面食ってしまう。しかしそれ以上にラスティの興味をそそったのは、その亀頭に浮かんだ透明な雫だった。 「久秀さん……これ……」  指先でちょん、と触れるとそれはぬるりと滑った。そのまま優しく握り込むと、どくんどくんと脈打っているのが分かる。 「舐めて」  言われるままに舌を出し、先端部分をちろりと舐める。  しょっぱい味が口の中に広がり思わず顔をしかめると、頭上から笑い声が聞こえてきた。見上げると久秀が優しい眼差しでこちらを見つめていた。 「無理しなくていいから、そうっと優しくな」  そう言って頭を撫でられると嬉しくなり、ラスティは言われた通りにゆっくりと舌を動かした。裏筋を舐めたり、カリの部分をなぞったりするとそれはさらに質量を増して硬くなる。 「そう、上手だよ」  褒められるともっとしたくなる。ラスティは夢中になって久秀のモノに奉仕を続けた。  裏筋やカリの部分を中心に舌を動かしつつ、時折唇で軽く食むようにして刺激を与える。すると先端からは先走り汁が出てきて、それを飲み込むたびに自分まで興奮していくような気がした。 「久秀さん……気持ちええ?」  上目遣いで見上げると、彼は優しく微笑みながら頭を撫でてくれる。それが嬉しくてさらに深く咥え込んだ瞬間、突然後頭部を押さえられて喉の奥まで突っ込まれてしまった。  苦しさに思わずえづいてしまいそうになるが、それでも必死に耐えて彼の動きに合わせようと努力する。 「ラスティ、出すよ」  そう言われた瞬間、口の中で熱い液体が溢れ出したのが分かった。どろりとした粘液を舌の上に垂らされる感覚があり、吐きそうになるのを堪えながらごくりと飲み下す。 「気持ちよかったよ」  ずるりと引き抜かれたそれはまだ硬さを失っておらず、ひくつきながら天を向いていた。  久秀はラスティをシーツに寝かせると、上に覆いかぶさる。そして、自身のものとラスティのものをぴたりとくっつけると、ゆるゆると腰を動かす。 「ほら、ラスティ。セックスの真似事だ」  兜合わせという体位で、お互いのモノを擦り合わせるようにして刺激を与える。  久秀のものと一緒に擦られるとたまらなく気持ちが良くて、ラスティも無意識のうちに腰を動かしていた。 「あっ……はぁ……ん……」 「気持ちいいか?」  耳元で囁かれ、ラスティは何度も首を縦に振った。その度に吐息がかかり、それがまた新たな快感を生み出していく。  久秀の手が伸びて来て、二人のものを同時に握ると上下に動かし始めた。時折先端部分を親指の腹でぐりっと押されれば腰が跳ね上がり、あまりの気持ちよさに意識を失いそうになる。 「あぁっ! あぅっ……くぅ……!」 「ほら、ここも好きだろ?」  そう言って先端部分を執拗に責め立てられれば、ラスティのものは嬉しそうに涎を垂らす。  その先走りが潤滑油となり、さらに動きがスムーズになった。ぐちゅぐちゅという音が耳に響き渡り聴覚からも犯されている気分になる。  久秀の手の動きに合わせて腰を動かすと、まるで本当に彼とセックスをしているような気分になった。 「あっ、あっ、あぁっ!」  絶頂が近づいてきたのか、久秀の動きが激しくなる。ラスティもまた限界を迎えようとしていた。 「くっ……出すぞ」  久秀の言葉と共に熱い飛沫が腹部にかかる感触があった。同時にラスティ自身も果ててしまい、二人分の精液がお互いの腹に飛び散った。  荒い息を整えつつ顔を上げれば、汗ばんで額に張り付いた前髪を優しく払われる。そしてそのまま触れるだけの優しい口づけをされた。それが嬉しくてラスティは自分からも舌を伸ばし、深い口づけを求める。 「久秀さん……」  甘えるような声を出してキスをせがむと、彼は苦笑しながらも応えてくれた。角度を変えながら何度も口付けを交わし、お互いの舌を絡め合う。 「ん……ふ……ぁ」  やがて満足したのか、ようやく唇を離す頃にはラスティの瞳は蕩けきっていた。  そんな様子に苦笑しつつ、久秀は優しく頭を撫でてくれる。その心地よさに目を細めればまた一つキスが贈られた。それが嬉しくてラスティは自分からも積極的にキスをする。 「久秀さん、好き……」 「俺もだ」  甘えるように抱き付いて、頬や首筋に何度もキスを落とす。すると久秀もそれに応えるようにラスティの体を強く抱きしめた。その腕の力強さに安心すると同時に幸せを感じる。 (ああ……ホンマ幸せや……)  この時間が永遠に続けばいいのにと思うほど、今のラスティは満ち足りていた。 「次は本当にしような」 「うん」  久秀の言葉にラスティはぱっと表情を明るくする。彼は優しく微笑みながら頷くと、もう一度ラスティの頭を撫でてくれた。  それが嬉しくてラスティはますます笑みを深くすると、今度は自分から唇を重ねたのだった。

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