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2-3.

 中層にあるのは光の神バルドルが太陽と月の光を模した昼と夜。  その夜が明けたのかと見まごうほどに明るい空に気がついたのは、ロキが林の中を走り出して少し経ってからだった。  向かう方角の空だけが、不自然に明るい。  あれは自分を導く光か、などとロキは思ったが、そんな幻想はすぐに打ち砕かれた。 「あれは……も、燃えてる!」  ロキは無意識に口に出していた。  村の方角だ。やはり、馬車はそれほど進んではいなかったようで、ロキが炎に気がついてから、すぐに見覚えのある街道に突き当たった。  足場の悪かった林を抜け、ロキはそのまま舗装された道を走り村の入り口に辿り着いた。  顔を背けたくなるほどの熱風が押し寄せる。村人たちは悲鳴をあげ、逃げまどったり、なんとか火を消そうと奔走していて、誰もロキに気がついていない。  村の中はあちこち炎が上がっているため、進むのが困難に思われた。  ロキは最短距離を諦めて、村の外周の林に入り、そこから川沿いに進み、道ではない道を駆け上がる。  幸い、火の手は村の中心部だけのようで、ロキの住んでいた小屋はまだ無事だった。  急いで駆け寄り戸を開く。 「じいちゃん‼︎」   呼びかけるが、人の気配はない。村を燃やす激しい炎の灯りがここまで届いて、その灯りを頼りに室内を見渡すが、爺の姿は見当たらなかった。 「……じいちゃん……どこいったんだ……」  胸がざわついた。  表に出て庭先を見渡すが、やはり爺の姿はない。  燃え盛る村の炎の熱が、ここまで届いてロキの呼吸を熱くしている。 ーーヴァルハラへ行かれまシタ  鴉の言葉を思い出す。  本当に? ヴァルハラって場所に行ったのか? じいちゃんが、俺を置いて? 一人で?  なんで、どうして、どういうことだと、あらゆる疑問が頭に浮かぶ。  ロキはボロ小屋を振り返った。その背景は濃紺と炎の赤い光が混ざり合っている。まるで知らない場所みたいだ。  激しい不安が押し寄せて、ロキは息を詰まらせた。その瞬間、背後で地面を踏み締める足音がする。驚き振り返った時には、その足音の相手がロキに飛びつく瞬間だった。 「……ぐっ!」  背中を地面に打ちつけロキは唸った。  ロキの胸ぐらを掴み、体の上に跨って地面に押さえつけているのはタークだった。火傷を負っているのか、向かって左の頬と耳の皮膚がじくじくとただれている。 「おまえっ! なんでこんなところにいるんだっ!」  タークはこれでもかと言うほど顔を歪め、唾を飛ばしながら喚いている。 「おまえがっ! おまえが逃げたから村がこんなことになってるのかっ⁉︎」  ぐらぐらと、タークがロキの頭を揺らした。

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