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7-3.※

◇  ロキが体の変化に気がついたのは、船が港を出てから五日目だった。  夕食を終えた頃から、体が怠く熱った感覚があり、それをヴァクに訴えると、またヴァクはロキの体を抱え上げて、船室のベッドに寝かせた。 「顔が赤いな、熱でもあんのか?」  ヴァクはそう言うと、ベッドの縁に腰掛け、その大きな手の甲をロキの額に当てた。  見てわかるほどの体調不良は、ロキにとってはこの際都合がいい。ヴァクはロキが尻が痛いと訴える間は手を出して来なかったが、そろそろその言い訳も無理が出てきたところだった。  ここ数日、巨人族らと一緒にいてわかったのは、彼らは自分たちよりひ弱な人間を奴隷のように扱うのではなく、どちらかというとペットの様に可愛がる性分だということだ。それはヴァク以外の他の巨人族の男達からも感じられた。  自らの所有物であるという概念は同じだが、ペットと奴隷では雲泥の差だ。巨人族に見初められたいと思う女性が多かったのも、みな彼らのその性分を理解しているからかもしれない。 「面倒をかけてすみません、お相手もできず……」  心にもないセリフを言いながら、ロキはベッドに横になりながら、毛布を鼻の上まで引っ張り上げた。  ヴァクは何も言わないまま、傍に座ってロキを見下ろし、時々前髪を撫でている。  落ち着かないからどこかへいって欲しいとロキは思ったが、ここはヴァクの船室なのでそうも行かないだろう。 「あの、ヴァク様……やはり、風邪をうつしてはいけませんので、俺フェンのところで眠ります」  そう言って、ロキは上半身を起き上がらせた。  しかし、立ち上がるのを阻む様にヴァクがロキの肩に手を置いた。その表情を見上げると今夜は酒を飲んでいないはずなのに、僅かに興奮した様に赤らんでいる。 「あ、あの……」 「ロキ」 「はい?」 「お前、何食った」 「え? ヴァク様と食べたもの以外は特に」  ロキは首を傾げた。  ヴァクの焔の瞳がギラリと光り、ロキの表情を覗き込んだ。 「なんだこの匂い」 「え? に、匂い?」 「お前から、やたらと甘い匂いがする」  ヴァクが何を言っているのか理解できないまま、ロキは眉を寄せた。  どこか様子のおかしいヴァクに少しの恐怖を感じ、ロキはヴァクから逃れるようにベッドの上に手をついた。 「待て」  そう言って今度は後ろから腰を抱えられて引き寄せられる。太い腕が体を包んだその瞬間に、自分の体に起きた変化にロキは驚き息を止めた。  抱え込まれた恐怖と共に、心臓が大きく脈打ち体の内部が昂り出した。 「ヴァク様……また、何か盛りましたか?」 「あ? 盛ってねぇ」  ヴァクは言いながら、ロキの首筋に鼻を押し付けた。息を吸い込みその匂いを嗅いでいる様だ。 「やべぇなこの匂い。我慢が効かない」  さらにきつく抱き寄せられた、ロキの尻にすでに布越しにもわかるほどに硬くなったヴァクの股間が押し当てられた。

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