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7-2.

 そういえば、とにかく神殿を目指そうと言っただけでプンプン尻尾を振ってついてきたフェンに、ロキは自分自身の目的を伝えていなかった。 「俺は、ヴァルハラってとこにいく」 「ヴァルハラ?」  フェンはパチパチ瞬きしながら白い睫毛を持ち上げた。 「そこにじいちゃんを迎えに行く」 「じいちゃん? ロキの?」 「うん、正確には血は繋がってないみたいだけどな、小さい頃からずっと一緒にいたんだ」  ロキは手持ち無沙汰にフェンの白い髪をくるくる指に巻きつけながら答えた。 「ずっと一緒にいたのに、なんでじいちゃんは、ロキを置いてヴァルハラに行ってしまったの?」 「……わかんない」  気がついたら爺は居なくて、鴉に爺はヴァルハラに行ったと教えられ、それが上層にあるらしいと聞いた。ロキはそれしか知らなかった。だから、とにかく上層を目指すしかない。 「ロキー」 「ん?」  髪を触られるのが気持ちいいのか、フェンは目を細めながら、ロキの胸元に潜り込んだ。 「じいちゃん迎えに行ったら、俺とロキとじいちゃんと三人で暮らす?」 「え?」 「ロキ、ずっと一緒?」  フェンの腕が背中に周り、ギュッと体を抱き寄せられた。 「フェン……お前には、神殿に行ってもらわなきゃ」 「しんでんー? どこそれ」  鼻先をロキの胸に擦り付けながらフェンが言った。 「神様のいるところ」  フェンは神様の器だ。オーディンのところにフェンを戻して、ロキは自身は安全に爺のところに辿り着く。それがこの旅にフェンを連れて行く理由なのだ。 「ロキも一緒?」 「……俺は行かないよ、神殿には」 「えー」  フェンはロキの胸元から顔を上げ、不服そうに口を尖らせた。 「ロキが行かないなら、俺も行かないよ」 「フェン……」 「ロキと一緒がいい」  そう言いながら、フェンはペロリとロキの唇を舐めた。  ロキが言葉に詰まったまま押し黙っていると、フェンは次に口元に唇を押し当てる。上唇を吸い込んで、開いた隙間にフェンの舌が入り込んだ。  ロキはやめろと言わなかった。こうしていれば、これ以上喋らなくていいからだ。  開けろと言いたげに歯列を辿るフェンの舌先に、ロキは自らの舌を絡めてそれに答えた。戯れるように口付け合うと、自然と腹の奥が昂り始める。ロキはそこでフェンの肩を押し、唇を離した。 「もう寝よう」 「ロキ、もっとしたい」  追いかけるように唇を突き出すフェンの頬をロキは両手で押さえつけた。 「もっとはしない。これで終わり」 「えー……」 「えーじゃない。代わりに今夜はここで寝てやるから」 「今夜だけじゃ嫌だ、毎日!」 「……んー、わかったわかった。ヴァクをなんとかできたらな」 「やったー」  そう言いながら、フェンはロキの体にしがみついた。中途半端に昂った下半身の熱を知られないようにと、ロキはさりげなく腰を引く。 「フェン、人間の姿で抱きついていいのは、服着てる時だけな」 「んー……わかった……」  やや曖昧に答えると、フェンはぐりぐりと額をロキの胸元に押し付けた。その後ろ髪をロキはゆっくり撫でてやる。  穏やかな波に揺れる船内で、やがて二人の寝息が小さく混ざり合っていった。

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