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11-4.※
荷車が小石を踏んだようだ。車体がガタリと跳ね上がり、ロキはガチリと歯を鳴らした。危うくフェンの膝から転がり落ちるところだった。
姿勢を安定させるために、無意識に首に腕を回して体を密着させる。質素な薄布を通してフェンの体温を感じ、少しだけ跳ねた心音を悟られないようにと、ロキは胸元を離して俯いた。
「ロキ、またいい匂いする」
「えっ⁈」
フェンの言葉にロキは肩を跳ね上げた。胸の内を見透かされたような気がしたからだ。慌ててさらにら体を離そうと身を捩るロキの首筋に、フェンは鼻を擦り付けてきた。
「ま、まって、フェン……薬を……」
フェンの鼻先が皮膚を滑る感覚で勝手に声が上擦ってしまう。ロキは慌てて衣服の裾を探り、そこに忍ばせていたガイドにもらった薬の瓶を取り出した。
「えー……飲んだら匂いなくなっちゃうよ」
「あ、バカこら! 離せっ!」
「ロキー……」
「甘えた声出してもダメ!」
ロキは邪魔しようとしつこいフェンの手をペチリと叩き、どうにか薬を数粒飲み込んだ。
フェンは不服そうに唸りながら、ロキの体をさらに抱き寄せ、薄布越しのロキの尻に、自らの股の間の熱をぐいぐいと押し当ててくる。
「ロキ、恋人のやつしたい」
「えっ、ぁっ、んぐっ」
返事を返すより先にロキの口は塞がれた。ぬるりとした感触が唇を舐め、ねだるようにその隙間に滑り込んでくる。さらに深く口付けられ、歯列をなぞって舌先を絡められると、下腹部の奥がジワリと疼き、ロキの理性は一気に薄らいでいった。
衣服の裾をまくり腹の皮膚を撫でてくるフェンの手を、ロキは拒むことができなかった。むず痒い感覚が腰を滑りフェンの指先が背骨の形をくすぐると、体が勝手に小さく跳ね上がってしまう。
「ロキ、ここ入れたい……ダメ……?」
「え、今⁈」
布越しに、フェンの指がロキの後孔を突く。疼いた腹の底からじわりと体液が溢れた感覚があった。
フェンはまた口付けると、ロキの舌を吸い込みながら下履きをずらし、熱を持って昂ったロキの性器をその手で包みこんだ。
ロキは緩やかに上下される感覚に、「んっ」と漏れた息を、フェンの唾液と共に飲み込んだ。
台車を引く男はまだ一人で「めんどくせぇ、だりぃ」と呟きながら、こちらの様子には気がついていない。しかしいくらキュルキュルガタガタ車輪の音がうるさいとはいえ、声を上げれば流石に気が付かれてしまうだろう。
それでも、やめてほしいと示す理性をロキはすでに失っていた。
先走りをを垂らしたロキの性器は、フェンに扱かれくちくちと音を鳴らしている。フェンのもう一方の手が腰回りから衣服の中に入り込んでロキの背後を滑り、後孔の入り口でじわりと溢れた体液を撫でた。
そのまま湿り気を確かめるようにゆっくりと指が入れ込まれる。ロキは思わず口付けられていた顎を引いて、フェンの肩に唇を押し付けた。
「んっぅっ……」
まだ解されていない内壁は、締め付け吸い付くようにフェンの指に絡みついた。体液を集めてほぐすように、フェンがロキの内部をゆっくりとかき混ぜている。
「フェン」とロキが耳元で囁くと、フェンは堪らないと言うようかのように、ロキの衣服の襟をずらして、首筋に甘く犬歯を突き立てた。ピリリと小さな痛みが走るが、もはやそれすらも心地よく、ロキはフェンの肩にしがみついたまま、唇の隙間から溢れるわずかな吐息をフェンの首筋に落とした。
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