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⚪︎月⚪︎日
⚪︎月⚪︎日
この村は長閑だ。
森と小川しかないから、村人はみんな退屈している。
だからなのか、みんな俺たちのことを気にしているみたい。
他に気にかけるものがないからなんだと思うけど。
この子があまり外に興味を持たないようにしたい。
だから、村人との交流は最低限にすることにした。
写本という仕事を紹介してもらえたから、どうにかこの小屋にこもったまま仕事ができそうだよ。
色々と目処がついて、少しだけ安心した。
⚪︎月⚪︎日
人間は神族よりも寿命が短いからなのかな?
季節が過ぎることを尊んだり、生きた年月をきちんと数えるものらしい。
今日村に買い物に出た時に、お店の人に聞かれたんだ。「その子いくつ?」って。
俺、わかんなくてさ。適当に答えたら、「それにしては小さいわね」って言われちゃった。
⚪︎月⚪︎日
最近この子はよく喋るようになったよ。
それになんだかませてるんだ。
お気に入りだった絵本を読んであげようとしたら、こっちのほうがいいって、俺でも頭が痛くなりそうな難しい本をうんうん唸りながら読んでる。
あと、喋り方が俺に似てる気がする。
一緒に暮らしてるからかな。
⚪︎月⚪︎日
薄々気がついていたんだけど、今日確信してしまった。
家の前を通りかかった村の人がね、「ここの家買ったの、若くて綺麗な男じゃなかったか?」って言ったんだ。
それは息子だって誤魔化したら、すぐに興味なくしたみたいに立ち去っちゃった。
たぶん、俺は普通の人間よりも早く老いているんだと思う。
そういえば、ほんとは俺って何歳なんだろうね?数えておけばよかったかな。
⚪︎月⚪︎日
君は今どうしてる?
この村には、ぜんぜん外の話が入ってこないんだ。
怒ってる? 怒ってるよね……
他にやり方はなかったのか、何度も何度も考えるんだけど、やっぱり俺にはわからなくて……
俺のこと探してる? 探してないかな? もう会いたくない?
俺はね、今でもずっと君に会いたいんだ。
何度も何度も夢に見たよ。
何度も見たから、これは予見かな?
まあ、俺は神様じゃないから、違うか。
中層には星がないけど、夢の中で、俺は君と一緒に優雅に星空なんか眺めていたよ。
夢じゃなければいいのに。
⚪︎月⚪︎日
最近、どうやら俺は少しおかしいみたい。
なんだか意識が急に途切れたり、常に夢の中にいるみたいな感覚になる。
あの子が不安がってる。
しっかりしなきゃ。
⚪︎月⚪︎日
間違っていた。俺は。
⚪︎月⚪︎日
会いたい
⚪︎月⚪︎日
正気でいられる時間がどんどん短くなってる。
あの子にこの村で一人で生きる術を教えなきゃ
でも、時間がない
とにかく君のところへ行かせちゃいけないんだ、
絶対に
⚪︎月⚪︎日
助けて。
怖い、怖くてたまらない。
わかるんだ。
俺はこのまま終わっていく。
君に会えないままで、君のことをきちんと守れないままで……
⚪︎月⚪︎日
たぶんもう最後だ
欲張りすぎたのかな
でも、俺は
君もあの子達も、誰も失いたくなかったんだ
今もこんなに愛しているのに
君はそれを知らないなんて
⚪︎月⚪︎日
夜がきた
鴉がくるのに、あの子がいない
はやく探しに行かなきゃ
だけど、体がうまく動かない
君を、あの子達を
俺が守らなくちゃいけないのに
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