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2.
「そうだ。⋯⋯少しおさんぽをしましょうか」
「「おさんぽー??」」
「そうです。まだお父様が寝ているから、ここでうるさくしたら迷惑ですからね。それに今の時間のお庭に行ったことがないでしょう」
「おにわー!」
「いきたい!」
腕の中できゃっきゃとはしゃぐ二人に微笑みかけた葵は、「じゃあ行きましょう」と立ち上がり、それぞれの手を繋いで歩き出す。
碧人の許可なしに部屋の外を出ようとしたら、後で何か言われると思われるが、今はそんなことよりも愛しい我が子達が最優先だ。そんなこと言ってられない。
出る時、肩越しにちらりと寝ているらしい夫を見つつ、外廊下へと出た。
高い塀に囲まれた、途方に暮れそうなほどの広い庭。
部屋の中でも思った、やはりまだ日が出ていなく、周りがかすみがかっていた。
「まだおひさま、でてないねー」
「まだお日様はねんねしているのですよ。だから、二人もまだ寝ていましょうね」
「やだっ!」
「おひさまおこすー!」
「あっ」
試しに言ってみたが、素直に聞き入れる気はないかと苦笑したのも束の間、二人は揃って飛び出してしまった。
「新! 真! 裸足のままでお庭に行っちゃダメでしょー!」
裾を持った葵は慌てて二人を追いかけた。
まずは葵から近かった新から捕まえようと、そちらへと向かう。
立ち止まって、その場でぴょんぴょん跳ねて笑っているから素直に捕まるかと手を伸ばした時、すんでのところで新は走り去ってしまった。
「おかーさま!」
背後から聞こえ、振り返ると大きく両手を振って、新に負けないぐらいの笑顔いっぱいの真が母親のことを呼んでいた。
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