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3.
新が離れてしまったことだし、今度は真を捕まえようと踵を返した葵はそちらへと向かった。
だが、先ほどと同じように一歩手前で真も元気よく走り出してしまったのだ。
「おかーさま! おかーさま!」
「こっち、こっち!」
遠く離れたところで並んだ二人が揃って葵のことを呼んでいる。
二人とも元気なのはいいが、反対に葵はもうすでに息が上がっていた。
こんなにも思いきって走ったのはいつだったかと思い出せないぐらい、まったりと過ごしていたせいで体力が思っていた以上に衰えてしまったようだった。
「⋯⋯二人とも⋯⋯、素直に、捕まって⋯⋯」
膝に手を着いた葵は、息を整えていた。
「おかーさま、はやくー!」
「まー、どっかにいっちゃうから!」
「あ⋯⋯」
真がそう宣言した瞬間、二人は真反対の方へ駆け出した。
「もう、二人とも⋯⋯っ」
二人が言っていた「お日様を起こす」話は? それよりもお散歩する話じゃなかったのか。
色んな感情がふつふつと込み上げていた葵だったが、立っているのもしんどいと思い、ついにはその場に座り込んだ。
「「おかーさま⋯⋯?」」
深く呼吸を整えていると、いつの間にかそばに寄っていた二人が葵の膝に手を着いて、顔を覗き込んだ。
「つかれた⋯⋯?」
「かおがあかい、おねつ?」
顔を上げると、二人が揃って心配そうな顔をしてくる。
このままだと何か余計なことを言ってしまいそうだと、呼吸を整えつつ、考えながらゆっくりと話した。
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