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「熱、ではありません⋯⋯。新が言うように、疲れました⋯⋯。あなた達がいつの間にか、追いかけっこするもの、ですから⋯⋯。元気なのはいいことですけど、お日様起こしに行くんじゃ⋯⋯なかったのですか⋯⋯」
「あっ、そうだった!」
「おひさまー!」
新と真はその場で天を仰ぐ。「おはよー!」という声と共に。
そう言うのは何故なのだろうと顔を上げると、太陽が顔を出していたのだ。
眩しいぐらいに輝くそれを目を細めて見ていた。
「──三人して、こんな朝早くに何をしているの?」
「「おとーさま!!」」
肩が上がりそうなほど驚き、振り返るとにこやかな笑みを浮かべる碧人がいた。
新と真は碧人に駆け寄って、それぞれ「おはよー」と挨拶すると、「おはよう、新、真」とそれぞれ微笑みかけて小さな頭を撫でていた。
穏やかな雰囲気であるのは、新と真がいるからだろうか。それとも、逆に油断してはならないものか。
「それで。何をしていたのかな」
「おひさまにおはよーっていってた!」
「あと、おかーさまとおいかけっこした!」
「ふぅん、そうか。なるほどね⋯⋯」
楽しげに今したことを話す二人に頷いた夫が不意にこちらを見た時、目を細めた。
ぞくっと、背筋が凍る。
「お日様に挨拶することも、元気に大好きなお母様と追いかけっこするのもいいことだ。けどね、浴衣でしかも、裸足でこんなにも汚してしまって、三人とも悪い子だね。おいたしないといけないかな」
さっきよりも笑みを深める。
悪い子。ずっと言われてきたその言葉に身体が疼いた。
「葵は、お仕置きをして欲しそうだね?」
「⋯⋯ぇ」
「おいたやだー」「ごめんなさい」と涙を浮かべて謝っていた二人もぼんやりとした顔で見つめてきた。
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