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「おかーさまは、いたいいたいしたいの?」 「そんなわけは⋯⋯」 「葵。子ども達の前で嘘を吐いてはいけないよ」 「嘘、なんて⋯⋯──わっ」 こちらに来た碧人が急に抱き上げた。 何の前触れもなくそうしてきたのもあって、不意に足がつかないことに落ち着かなくなった。 「な、なに、何でこんなことを⋯⋯急にしてくるの怖いし、早く下ろして!」 「葵が嘘を吐くからだよ。素直になってくれたら下ろしてあげるよ?」 「ちょっと⋯⋯! こんなの、酷いっ!」 「酷い? 酷いのは葵だよ。だって、まだ新しくしたばかりの浴衣をこんなにも汚してしまうのだから。僕は悲しいな、せっかく葵のために新しいのを与えたのに、すぐにだめにしちゃうとは思わなかった。葵は嬉しくなかったんだね」 「⋯⋯っ」 前のは、新達のヨダレで染みだらけになってしまった。というのもあるが、浴衣を着たまま碧人が迫ってきて、故意に汚して、着られなくなってしまったのだ。 今回のようにたった一度で汚してしまうほどにしたのも悪くはあるが、すぐにしかも何度も汚す人には言われたくはない。 「おかーさま、たかいたかい?」 「ねーねー、まーもたかいたかいして!」 碧人に言い負かされるのが悔しい。何か言い返したいとあれこれ考えていると、二人が夫のそばに寄ってはせがんでいた。 すると、葵のことを抱き寄せた夫は言った。

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