8 / 35
8.
「え、なに⋯⋯」
どうしたの、と碧人の声を横で聞きながら、目線はそちらに向ける、と。
使用人の手から逃れてきたらしい、新と真が葵人のそれぞれの足裏に触っていたのだ。
先ほどのタオルとはまた違うくすぐったさに身じろぎしてしまう。
「こちょこちょ〜」
「おかーさま、くちゅくったい?」
舌っ足らずに言っては、さっきの泣きそうな顔たちと一変して無邪気に笑う二人に、「やめて」とくすぐったさもあって、本気でそう言っているわけではないため、二人からすれば楽しそうに笑っているように見えたのだろう。きゃっきゃと二人も楽しげに笑ってはその手を止めない。
「葵、さっき僕がしたよりも楽しそうにしているじゃないか」
「そっ、そんなことはないよ⋯⋯っ」
「⋯⋯お仕置きのつもりでもやっていたけど、いつもしているよりも葵にとっては物足りないからかな。それとも、二人の方が大好きだから楽しそうなの⋯⋯?」
「それは、あは⋯⋯ん⋯⋯っ」
「じゃあ⋯⋯新と真。お母さまは大好きな二人にやってもらいたいみたいだから、いっぱいしてあげて」
「ほんとー?」
「じゃあ、いっぱいこちょこちょするー!」
「まっ、まっ、て⋯⋯ふふ、はは⋯⋯っ」
制止を振り払うように二人は両手を使ってまでくすぐってくる。
足は自由であるからその手から逃れることはできる。だが、そうしてしまうと二人が可哀想であるため、二人が満足するまでそうしてあげるしかなかった。
しかし、そうすると碧人からすると気に食わない状況であるため、あまりよろしくない。
じゃあ、どうすればいいの。
上手い回避が思いつかない葵人は、そのまま二人のしたいようにしてあげるしか方法がなかった。
ともだちにシェアしよう!