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9.
新と真がようやく飽きてくれたのは、そろそろ朝食の時間になる頃合いだった。
お散歩のつもりで外を出たはずなのに、追いかけっこが始まってしまい、その後は父親の真似であるこちょこちょもやられて、まだ今日は始まったばかりなのに寝てしまいたいぐらいにどっと疲れが出ていた。
お散歩なんて提案しなければ良かったとさえ思ってしまう。
しかし、子どもの突拍子もない発想にはいつも予想外ばかりで、いくらこちらが提案してもすぐにそっちへと興味が向いてしまうのだろう。
忙しないことだが、結果的に二人が楽しそうだったらいいか、ということにしておこう。
そのまま当たり前に碧人に抱き上げられたまま、出てきた部屋に共に入る形になった。
外に出ている間、使用人達が片付けてくれたのだろう、広げたままだった布団が片付けられ、それぞれの着替えが綺麗に置かれていた。
と、先に中にいた二人がそそくさとそれを取っては、悪戦苦闘しながら何かをしていた。
その様子に思わず碧人と顔を見合わせた。
「二人とも何をしているのですか?」
碧人に下ろしてもらい、おぼつかない足取りで二人に近づいた時、「できたー!」と声を揃えて言う。──が。
「自分で着替えようとしたのは偉いです。けれど、新、真。着替える着物を間違えてますよ」
「あーがまー!」
「まーがあー!」
ただ羽織っただけであったが、二人は満足げに手を上げてそう言っていた。
新 が真 で、真 が新 ?
一体それはどういうことなのだろう。
首を傾げて少々考えている間、二人は円を描くようにパタパタと走り回っていた。
と、急にそういうことかと納得した。
二人は互いの着物を交換して、それになりきっているのだと。
子どもの発想はこちらが考えもつかないことをする。それが、こんなことを思いつくなんて。
ああ、可愛い。なんて可愛いことなんだろう。
気づけば頬が緩み、身悶えしていた。
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