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10.
「あらあら、どちらも可愛くて似合ってますよ」
ふふ、とそのままそれぞれ着付けてあげると、二人は顔を見合わせて笑った。
「きょーは、あーがまーね!」
「まーはおとーさまとおそろい!」
いつもならば新も真も母と同じ装いがしたいと喧嘩をするほどだ。
しかし、今日はそのような気分らしい。
本当によく分からないと、思わず笑みを零しながらも二人の気が済むまでこうしてあげようと思った。
「さて、可愛い我が子達をずっと見ていてもいいけど、葵も着替えないとね」
そうだった。まだ自分のことをやっていなかった。
言いながらごく自然と脱がしてくる夫の手を阻む。
「どうしたの、葵。そんな格好で一日いるつもり?」
「そうじゃないけど、ここで脱ぐのは⋯⋯」
「何今さら恥ずかしがっているの? 子ども達とお風呂を一緒に入っているのに」
「その時だって、そんな全てを晒しているわけじゃないし⋯⋯」
「全て? なんのこと?」
笑みを張り付かせたまま首を傾げてみせる。
なんてまぁとぼけたことを言っているのか。全ての元凶は碧人のせいなのに。
喉元まで出かかった言葉を呑み込んで、いまもなお無理やりにでも脱がそうとする手を何がなんでも阻止していた、その時。
「「おかーさまもおとーさまもやって!」」
「「⋯⋯え?」」
声を揃えて言う我が子達に、夫婦も揃って返した。
夫と何をして欲しいのだろう。
「何をやって欲しいのですか?」と二人に訊くと、新と真はにっこりとした顔を互いに見せた後、こう言った。
「「あーとまーがしていること!」」
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