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しかし、まだ子ども達は食べている最中だ。 ならせめてもぐもぐしている間に、ささっと口に入れようかと、まさしく真が嬉しそうな笑みを浮かべてもぐもぐしている時、そう思い、自分の分として用意された朝食に手を伸ばそうとした。 「──ほら、葵」 「え、なに⋯⋯は、んっ」 振り返った矢先、開いていた口に何かが入る。 それが用意された朝食のものだと分かり、されど急なことに驚き、困惑していた葵人はゆっくりと咀嚼していた。 「冷めちゃっているけど、美味しい?」 「ん⋯⋯うん、美味しい、けど⋯⋯」 「そう、良かった。葵が子ども達を優先してお腹が空いても食べられなさそうだったから、あーんしてあげたんだよ」 葵人の心情を察してか、碧人がゆっくりと丁寧に説明してくれたことでようやく理解した。 さっきは急に抱き上げたりしてきて、足がつかない恐怖と不安と怒りが込み上げてきたが、今の「急なこと」にはそれらを払拭する、嬉しい気持ちが込み上げてきた。 「ありがとう、気を遣ってくれて」 「葵もさっき気遣ってくれたでしょう。⋯⋯ほら、もっと食べる?」 「お言葉に甘えて」 箸で運ばれた一口分にしてくれたものを素直に食べた。 碧人が言っていたようにすっかり冷めてしまっているが、いつもより少しだけ美味しく感じる。 「碧人さんもまだ食べてないでしょう。僕が食べさせてあげる」 「ふふ、ありがとう」 碧人の分から一口分に箸で取り、口に運ぶ。 「美味しい?」 「うん、それはもちろん。葵があーんしてくれたからね」 「そんなことを言って⋯⋯」 調子に乗らないでと、怒っている調子で言った。しかし、その表情は苦笑にも似た微笑みだった。

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