18 / 35

18.

そんな時、視線を感じた。 それは間近でものすごく、もっというと二人分の視線だ。 「え、え⋯⋯っと、二人ともどうしたのですか⋯⋯?」 「おとーさま、おかーさま、あかちゃんみたい!」 「⋯⋯え?」 「あーんだって! あーん!」 「あーん!」 真がスプーンを持っている手つきで新に手を出すと、新がいっぱいに口を開けて食べる真似をしていた。 二人だって、碧人とそれぞれ食べさせてもらっていたのに、それはそれ、これはこれというものか。 「おかーさまも、おとーさまにたべて、うれしそー!」 「そう、ですか⋯⋯?」 「まーたちもあーんしたら、うれしー?」 「それは、まあ⋯⋯」 「じゃあ、すぷーん!」 「すぷーん、ほしー!」 葵人の腕の中で「ほしー」とぴょんぴょんする二人に、碧人は新に、葵人は真にそれぞれ渡した。 膝からほぼ同時に下りた二人は、自分達用に用意された食事でまだ上手くできない手つきで、ようやく掬えたようで歓喜の声を上げていた。 その様子に愛おしいと頬を緩ませていると、 「「はい、あーん!」」 と、それはもうにこにこ顔で差し出してきた。 お約束だと思うほど、どちらも母親である葵人に向けて。 「あら、お父さまには?」 「「おかーさまがいい!!」」 迷う素振りもなくはっきりという小さな子達に、「あぁ、そうなんですか⋯⋯」となんとも言えない声音を出した。 「まあ、二人はお母さまのことが大好きだもんね。⋯⋯僕には及ばないけど」 密かに呟いた言葉に、何を子ども達と張り合っているんだがと呆れていたが、「あーん!」と急かす二人に煽られて、それぞれ口に運んだ。 「「おいしー?」」 互いに反対側に小首を傾げて訊いてくる。 その問いに、ふっと笑みを浮かべてこう言った。 「ええ、美味しいですよ」

ともだちにシェアしよう!