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20.
二人を抱きかかえたままどう取りに行けというのか。
全く突拍子のないことを言う子達だ。
仕方ない、と小さくため息を吐いた。
「しっかり掴まっててくださいね」
「はーい」
「わかった!」
元気よく手を上げて返事した二人をそれぞれ見た後、ぐっと回していた手に力を込めて立ち上がった。
その時、少々よろけた。
やはり前よりも重くなり、しかもそれが二人分だ。それぞれ抱きかかえるのはなかなかに難しい。
一歩一歩を強く踏みしめて、なんとか絵本が置いてある場所に着いた時には、少々息が上がっていた。
「おかーさま?」
「だいじょーぶ?」
「ええ、まぁ⋯⋯それよりも、何を読みたいのですか?」
気を取り直してそう訊ねた途端、母親のことを心配することはすっかり忘れ、「えーっと、これ!」「まーはこれ!」と精一杯手を伸ばし、隣同士で並んでいた本をそれぞれ取って、差し出した。
読みたい絵本はバラバラになってしまったか。
「順番ですからね、順番」と言い聞かせて、新が選んだ絵本を手に取った。
真は、ぷっくりと頬を膨らませて怒っているようだが、そのほっぺをつんつんしたくなるぐらい可愛くてたまらないと、密かに笑って、読み始めた。
「──はい、おしまい」
パタン、と絵本を閉じると、「おもしろかった〜」とほぼ同時に拍手していた。
真の機嫌が直ったようで良かった。
「じゃあ、待てた真が持ってきた絵本でも──」
「もーいっかい!」
「え?」
「まーももーいっかい!」
「えっ、真も?」
「だって、真も選んだ絵本があるでしょう」と選んだ絵本を見せるが、「さっきのもーいっかいよんでー!」と言われてしまった。
拍子抜けしてしまった。頬を膨らませてまでご機嫌ななめだったのに。
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