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二人を抱きかかえたままどう取りに行けというのか。 全く突拍子のないことを言う子達だ。 仕方ない、と小さくため息を吐いた。 「しっかり掴まっててくださいね」 「はーい」 「わかった!」 元気よく手を上げて返事した二人をそれぞれ見た後、ぐっと回していた手に力を込めて立ち上がった。 その時、少々よろけた。 やはり前よりも重くなり、しかもそれが二人分だ。それぞれ抱きかかえるのはなかなかに難しい。 一歩一歩を強く踏みしめて、なんとか絵本が置いてある場所に着いた時には、少々息が上がっていた。 「おかーさま?」 「だいじょーぶ?」 「ええ、まぁ⋯⋯それよりも、何を読みたいのですか?」 気を取り直してそう訊ねた途端、母親のことを心配することはすっかり忘れ、「えーっと、これ!」「まーはこれ!」と精一杯手を伸ばし、隣同士で並んでいた本をそれぞれ取って、差し出した。 読みたい絵本はバラバラになってしまったか。 「順番ですからね、順番」と言い聞かせて、新が選んだ絵本を手に取った。 真は、ぷっくりと頬を膨らませて怒っているようだが、そのほっぺをつんつんしたくなるぐらい可愛くてたまらないと、密かに笑って、読み始めた。 「──はい、おしまい」 パタン、と絵本を閉じると、「おもしろかった〜」とほぼ同時に拍手していた。 真の機嫌が直ったようで良かった。 「じゃあ、待てた真が持ってきた絵本でも──」 「もーいっかい!」 「え?」 「まーももーいっかい!」 「えっ、真も?」 「だって、真も選んだ絵本があるでしょう」と選んだ絵本を見せるが、「さっきのもーいっかいよんでー!」と言われてしまった。 拍子抜けしてしまった。頬を膨らませてまでご機嫌ななめだったのに。

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