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「真⋯⋯?」
起きたのかと思い、呼びかけてみるが、そうではなさそうだった。
しかし、それでもちゅーちゅー吸っているらしい真のことを最初こそどうしたらいいのかと困っていた葵人だったが、次第に小さな口で一生懸命吸っているさまが可愛いと思えてきた。
「おっぱいを飲んでいた頃みたい」
くすくすと、起こさない程度に小さく笑う。
ところが、そのおっぱいを散々弄られ、子ども達が吸う時にも感じてしまい、飲む邪魔をしてしまったが。
余計なことを思い出してしまった。
「──葵。何に笑っているの?」
笑った顔のまま固まってしまった。
まさかその張本人がやってくるとは。
噂をすれば何とやらというものか。⋯⋯噂という噂はしてないが。
「え、あ、何でいるの?」
「仕事のキリが良くてね。息抜きがてら葵達のことを見に来たんだ」
「そうなんだ、急に来るからびっくりしたよ」
「葵は、急に来てびっくりしてしまうぐらいの僕にやましいことがあるってこと?」
「そんなものありません⋯⋯っ!」
子ども達が寝ていることもあり、抑え気味にしかしはっきりと言った。
「ふぅん、そう」と穏やかに笑っているようにも、笑ってないような顔をする碧人は、「それで、やましいことはない葵は、何に笑っていたの?」と再度訊ねてきた。
やましいことは余計だと心の中で文句を呟きつつ、答えた。
「真のほっぺに突っついていたら、僕の指を吸ってきたの。その様子がおっぱいを飲んでいた頃を思い出して、思わず笑っちゃったの。同時にその頃と比べて大きくなったなって⋯⋯」
さっき柱に二人の身長を刻んだことも言いつつ、じんわりとくるものがあった。
子育てなんて何にも分からないままに始めて、何が正解なのかどうなのかも分からない不安を抱えていたが、そうであっても自分のことを母親だと慕ってくれている二人はこうやって順調に育ってくれていると、尊いものを感じて感動を覚えてしまう。
この子達と出会えて良かったとさえ思える。
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