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28.※ディープキス

手を引かれ、さっき二人の身長を書いた柱へと行った。 そのまま柱に背中をくっつけられる。 「葵、気をつけ。そのまま動かないでね」 そう言われた通りに考えるが前にそのような姿勢を取る。 この感覚懐かしいなと脳裏にあの頃のことが思い浮かんだ。 昔は、碧人とさほど変わらないような身長の頃があった。 けれども今は。 ふっと顔を上げる。 葵人の頭上では、置きっぱなしになっていた定規を当て、鉛筆で書き込んでいる夫の下から見た姿を捉えた。 今ではこのような角度が当たり前になってしまった。 違った角度の彼の姿を見られて嬉しいと思ってもいいのか、変わってしまったなと寂しい気持ちもあり、複雑な気持ちになった。 と、見られていることに気づいたのか、不意に碧人が見下ろしてきたと思った刹那、身を屈めて顔を近づけさせた。 それが無防備な唇に碧人の唇が合わさったことでキスしてきたのだと分かり、しかし、いきなり何なんだというのか。 「な、何⋯⋯──ふっ、ん⋯⋯っ」 戸惑う葵人にまた唇に触れてくる。 今度はすぐに離れることなく、そして、あろうことか舌まで入れてくる。 またしてくるとは思わなかったことに驚いて、舌を入れることを許してしまうんじゃなかったと思ったのもほんの僅かなことで、愛撫する碧人に身を委ねてしまった。 葵人が躊躇して舌を動かさずとも、すくい上げるように碧人が率先として動かしていた。 舌先で誘うように突っついてきたかと思うと、碧人の舌は絡めてくる。 でたらめに動かされ、それを執拗にしてくるものだから、葵人はすぐに息が上がっていた。 ピクピクと身体が小さく痙攣のような反応をしていた。 のような、と思ったそれは、恐らく軽く達したものだと思われる。 曖昧になってしまうのは、碧人によってそっちの気まで回らないからだ。 口内で自分のものか、それとも碧人のものか、どちらとも区別がつかない、その混ざり合った唾液や舌でも碧人と一つになれたように思えて、気づけば頬が緩んでいた。

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