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32.※玉握り、指イマラ
「み、見る⋯⋯」
そう言うのが精一杯だった。
葵人にとっては長く感じた沈黙の後、さっきのような顔を見せた。
「そう素直に言えば良かったのに。じゃないと子ども達の前で罰を与えようか、今握っている葵人の玉袋を痛いぐらい握り潰してしまおうと思っていたところだよ」
「あ⋯⋯ッ、いッ⋯⋯!」
そう言いながらもやや強めに握ってきて、危うくさっきよりも声を上げるところだった。
子ども達の前で痴態を晒すのなら、その部分が最悪使えないものになってもいい。
その方が断然にいいと思うのは親心なのか。それとも、自己満足なのか。
今はひとまず機嫌が損ねていない様子に内心安堵をし、碧人によって先ほど身長を刻んだ柱へと身体を向けさせる。
その際、子ども達が寝ている姿を名残惜しそうに見ながら。
碧人に背を向けた途端、頭上に持ち上げられていた両手は背中にくっつけるように後ろ手で組み直され、空いていた手は顎を掴み、ある方向へ無理やり向けさせられた。
目に映ったのは、『葵人』と綺麗な字で書かれた名前と自分の今の身長を表す線。
よく見ていた碧人の字で、久しぶりに見ても相変わらず美しい。
「柱によく身長を書いていたよね。⋯⋯その時のこと思い出してくれた?」
「う、うん⋯⋯。昔から碧人さんの方が大きかったのが羨ましくて、背伸びして自分の方が大きいってことを⋯⋯そういえば、新と真も同じようなこと──は⋯⋯ぁん⋯⋯っ」
言葉を遮るように指を突っ込まれる。
何が起きたのかと理解が出来ないまま、バラバラに動く指に蹂躙されていた。
二本の指で葵人の舌を挟み、そのまま捻り、時には引っ張られ、かと思うと、舌の上で指を滑らせる。
碧人の手によって両手を拘束されているのと同じく、身動きが出来ない舌をしたいようにされ、ただ口を開けたままでいることが出来ないその口から、涎をだらしなく垂らしていた。
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