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夢見る俺たちのオメガバース (13)
「あっ……あぁ、ん……っ」
ベッドがゆるやかに軋む音に、熱を帯びた吐息が重なる。
「理人さん、お願い。好きって言って」
「すきっ、好きだから……っ」
ーー触って。
そこを押しつけながら、理人さんが腰を揺らす。
かわいい。
俺はにこりと笑い、理人さんの手首を縫い止める手に力を込めた。
「だめです。まだ、全部俺のものになってない」
理人さんが、アーモンド・アイを揺らして不満を露わにする。
俺の『理人さんの潤んだ眼差し耐性』が0だとわかってやっているのだ。
でも、今夜の俺は流されない。
理人さんの上半身に視線を戻すと、唾液の跡が胸元で途絶えている。
身を屈め、脇腹に舌先を這わせると、理人さんはまたかわいく悶えた。
*
『お願いが、あるんですけど』
『今すぐ抱かせてください』
『今夜は、全部俺にさせて?』
『最初から最後まで……全部』
その時、自分がどんな顔をしていたのか、俺にはわからない。
でも理人さんは俺の顔を見上げ、しばらく考え込んだ後、こくんと頷いた。
手を引いて連れ込んだのは、角を曲がってすぐのところにあったビジネスホテル。
理人さんは少し驚いたような顔をして、でも、何も言わなかった。
そういうことをするための場所じゃないから、そういう雰囲気ももちろんない。
あるのはベッドとシャワーくらいで、でも、俺にはそれだけで十分だった。
俺が服を脱ぎ始めると、理人さんもそれに倣おうとする。
その手を押しとどめて、俺は怒った。
「だめです」
「えっ」
「言ったでしょ。今夜は全部俺がするって」
「……」
「はい、ばんざーい」
理人さんは思い切り唇をへの字にひん曲げて、でもやっぱり、何も言わなかった。
両手を挙げ、シャツを脱がされ、ズボンを脱がされ、靴下を脱がされ、パンツを脱がされ、生まれたままの姿になった身体を隅々まで見られ、
「理人さん」
浴室の中から手招きする俺が、
「準備、しましょう」
シャワーヘッドを外したホースをプラプラさせていても、何も。
*
「そんなとこまで舐めるのかよ……ッ」
くるぶしにしゃぶりついた俺を、理人さんが呆れる。
「ここも理人さんの一部ですから」
「んっ……」
尖ったところを舌先でなぞると、理人さんのつま先がキュッと丸まった。
「こんなところでも感じちゃうんですか? 理人さんのエッチ」
「……ッ」
キラキラ輝くアーモンド・アイが俺を睨み、シーツを握りしめている手に力がこもる。
歪んだ唇は小刻みに震えていて、でも、言の葉を紡ぐことはない。
俺は理人さんの強張ったふくらはぎに口付けを施してから、長い脚を持ち上げ、膝を折りたたんだ。
身体を割り込ませ、白い内股を押し広げると、淫らなそこが露わになる。
硬さを増した熱の中心は焦 らされ焦 がれて健気に震え、控えめで小さな窄まりは、呼吸のリズムに合わせて収縮を繰り返している。
きっと、無意識なんだろう。
理人さんが見せつけるように腰を揺らして、早く、早くと強請ってきた。
でも、残念。
俺の狙いはそれじゃない。
「なっ……!?」
「ここも、ちゃんとマーキングしておかないと」
「は!? マーキングって……んんッ」
きゅんっと萎んだそこをこじ開けるように舌をねじ込むと、理人さんの尻肉が引き締まり、俺の顔を横から挟み込んできた。
「理人さん、ここ舐められるのけっこう好きですよね」
「ちがっ……感覚が……っ」
「感覚?」
「気持ちよくない……っ」
嘘ばっかり。
「何でそんな、ペロペロすんだよ……!」
うわ。
ペロペロだって?
理人さんが言うとものすごくエロいな。
ペロペロ。
「もう、いいだろ……っ」
「何がですか?」
シレッと言ってのけると、理人さんの眉毛がギュッと寄った。
それを見て、俺はタイムリミットが近いことを悟る。
これ以上焦らすと理人さんが本気で拗ねて、『もう佐藤くんとエッチなことしない!』宣言が飛び出してしまう。
そうなると、最低でも一週間は触れさせてもらえなくなるだろうから、それは回避しておきたい。
そんなの、俺の気が狂ってしまう。
「何が足りないのか、言ってください」
「……」
わかってるくせにーー理人さんの視線が、そう訴えてくる。
でも俺の口からは、もちろん言わない。
その代わり、理人さんの手を取り、自分の股間に押し当てた。
「言ってくれたら、すぐにあげるから」
理人さんが、むうっと頬を膨らませる。
そして俺の手を振り解くと、のそのそと体を動かし、四つん這いになった。
引き締まった太ももが痙攣し、左足と右足が絡み合うのを、俺はじっと見つめる。
理人さんは躊躇うように両足の親指を擦り合わせた後、おずおずと伸ばした両手で尻肉を左右に引っ張った。
「いい加減挿れやがれ。この変態野郎……っ」
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