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第5話 想い
結局、その日の体育で、秀平はスリーポイントシュートを三本決めた。
全て聖のアシストからだ。
女子バスケの部員が再び言った。
「あの二人に身長差なんて関係ないわね。180センチ台の男子バスケ部員が軽くあしらわれている。バスケ部に入ってくれないかしら」
クラス委員長の八木は、しみじみと詠った。
「推しカプの絆を観れた尊さよ今日は何とめでたき日かな」
だが、体育が終わった後、秀平は珍しくイライラしながらカバンの中をかき回していた。
「どうした、秀平?」
「タオル忘れた。参ったな、汗まみれで次の授業だよ」
「ザマァだな。人のこと、女らしさに磨きがかかったとか言うからだ」
聖は、自分のタオルを秀平に投げる。
「ホレ、それ使えや。オレは、も一つあるから」
「おお、サンキュ! やっぱ、持つべきものは友だね」
あまりにも大袈裟に秀平が喜ぶので、聖は笑いながら言った。
「オウよ」
放課後、聖はさりげなさを装いながら手を差し出す。
「秀平、さっきのタオル」
「洗って返すよ。嫌なら新品買ってくるから」
聖は、秀平の胸に軽くパンチする。
「アホ言うな。そんなのいいから、ホラ、返せや」
「でも、悪いし」
「オマエなぁ、そんな気ぃ使う仲じゃねぇだろ。どうせ洗うのは洗濯機だし」
「汗くさいよ。ゴメンね」
「オウよ。気にすんな」
聖は湿ったタオルを受け取りながら、裏心が秀平に見透かされないようにと願った。
確かに秀平は、そんな些細な裏心を見透かせるほど繊細な人間ではなかった。
だが、それを見透かしている者が間近にいる事に、聖はまだ気付いていない。
八木は、頬杖を突きながら一句読む。
「汗くさいタオルに込めし情欲の何に使うや目的一つ」
——どうしてこんな事を……。
聖は帰宅すると、机の上のカバンを見つめたまま、そう自問した。
そして、カバンの中から秀平に貸したタオルを取り出す。
マリン系の爽やかな制汗剤と、汗が混じった匂い。いつもの秀平の匂いだ。
その匂いだけで勃起する自分を自覚する。
堪らずタオルに顔を埋め、思い切り深呼吸した。
「はっ……ああっ……」
切なさでベッドに倒れ込み、タオルで顔を覆う。
学生ズボンを脱ぐのももどかしく、パンツと一緒にずらして勃起したモノを取り出した。
それは真っ赤に変色し、今まで経験したことがないほど硬くなっていた。
目を閉じると、昼間見た彫刻の様な秀平の裸体が瞼に浮かぶ。
想像の秀平が聖の上から覆い被さり、硬くなったソレを優しく握った。そして、膨らんだ乳首に舌を絡める。
握った右手を小刻みに上下すると、聖は一気に高まった。
乳首をいじっていた左手を慌てて離し、タオルでソレをくるむ。
「あ……ああ……秀平……」
その名を口にすると同時に、聖は激しくエビ反った。
「かはぁ……あ……はぁ……」
自分でも引くほど大量の精液が放出され、タオルは秀平と精液の匂いが入り混じる。
射精が終わると、津波のような罪悪感が聖を襲った。
「ゴメン……ゴメンなさい、秀平……大切な親友をおかずに使うなんて……」
涙が枕を濡らした。
しかし、眼を閉じると、再び想像の秀平が聖の上に覆い被さってくる。
(悪いコだ。聖みたいな悪いコには、お仕置きが必要だね)
そう言うと、聖の口に指を入れてくる。聖はその指を夢中でしゃぶる。
実際には、台所からくすねたマドラーだ。ガラス製で先端がボール状になっている。
十分に唾液で濡らした後、秀平はその先端をお尻の穴に添えた。
(覚悟はいいね。入れるよ)
聖は、興奮に震えながら答える。
「いや……許して……」
マドラーが穴に飲み込まれていく。
「お……お」
言葉にならない快感が聖を襲う。
射精により、見る影もなく収縮していたソレが、押し出される様に再び大きくなっていく。
マドラーは、小刻みに出し入れを繰り返されながら、徐々に奥へ奥へと進んだ。
そして、聖は再びエビ反る。
「ああっ!」
マドラーのボールの部分が、前立腺のイイ部分に到達したのだ。
ソレには指一本触れないまま、聖は白濁した粘液を空中に噴き上げる。
そして、タオルで受ける余裕すらなく、熱い精液は聖の顔面に降り注いだ。
夕方の赤い光が、カーテンの隙間から入ってきた。
その光が、ベッドの上の写真立てを照らす。
中学の卒業式当日の写真だ。
中学が違ったので、二人はわざわざ待ち合わせて一緒に撮った。
陽気に笑う聖の隣で、秀平は穏やかな笑顔を浮かべている。
「はぁ……はぁ……」
二度目の射精を終え、顔中精液まみれの聖を、秀平はいつもの笑顔で見下ろしていた。
その笑顔を見ていると、聖は自分の行為に対する嫌悪感で一杯になり、死んでしまいたいと思った。
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