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第16話 すれ違う心

 文化祭が終わると、余韻に浸る間も無く、試験前の緊張した期間へと突入する。  それでも、美術部のイベントに突然現れ、他校の生徒と一緒にいた美少女のことはちょっとした話題になっていた。校内に該当する人物がいなかったからだ。  その美少女の正体を知っているのは聖本人と美術部員、そして秀平だけだったが、彼らの口は固く、結局他校の女子生徒がT高の制服を着ていたというのが定説になる。  そして、生徒達の関心は、目の前の試験へと移って行った。    聖と秀平はお互いを意識し、以前ほど教室で絡む事は少なくなった。  クラスメイトから「ケンカしたのか?」と心配された程だ。  それでも、帰りは必ず一緒に帰った。  今日は試験前で体操の練習が無かったので、少し遠回りをする。  少し暗くなった頃に高台の公園に行った。  一番左端のベンチなら道路から死角になる事を知り、いつもそこに座った。そして、少しずつ大胆に唇を重ねるようになっていた。  その日も秀平は、強弱をつけて聖の舌に自分の舌を絡める。聖の口一杯にクールミントの味が広がった。 「ア……アン……」  聖の口から声が漏れる。 「聖くん、可愛い」  秀平が耳元で囁くと、その声だけで聖は感じてしまう。 「アン……恥ずかしい」 「恥ずかしいのはボクもだよ。ほら、もうこんなになってる」  秀平の手に導かれ、ズボンの上に手を当てると、そこは焼けた鋼かと思うほど、熱く硬くなっていた。 「秀平、苦しそう……ごめんなさい、オレのせいだね」 「苦しいけど、悪いのはボクだよ。聖くんに淫らな気持ちを抱いたボクが悪いんだ」 「そんな事ない。秀平は悪くないよ」  聖は、秀平の大きく膨らんだ先端の部分を、人差指の先で優しくさする。  さりげない動きだが、同性だからわかる男の一番敏感な部分を的確に攻めていた。 「んッ!」  秀平は苦し気な表情で呻き、絶頂を精神力で抑える。  聖は弾かれる様に人差指を離す。 「秀平、ゴメン! でも、ボクでここまで硬くなってくれて嬉しい……今、楽にしてあげるね」  聖は、秀平のチャックのスライダーを指先で持つと、少しだけ下ろした。ブリーフに包まれた鋼の先端が顔を出すと、後はソレが自らのそそり立つ力でスライダーを下ろしていく。  トランクスの先には、忍耐を証明するシミが広がっていた。そこから立ちのぼるオスの匂いで、聖は目の前がクラクラする。 「こんな所で……これ以上はダメだよ」  秀平は歯をくいしばりながら訴える。気を緩めれば、それだけで射精しそうだった。 「大丈夫……オレ、初めてだけど、秀平を満足させられると思うから」  聖がトランクスの前を掻き分けると、ソレは凄まじい勢いで飛び出した。  太さも長さも色も、聖のとはまるで違う。ドス黒い何本もの血管が怒髪天を衝くがごとく浮き出し、脈打つ度にビクンビクンと跳ね回っている。 「はあっ……ステキ……」  凶暴な魔獣を思わせるソレに聖の思考は停止し、引き寄せられるように震える舌を近付けた。  だが、口に含む寸前に押し止めたのは、秀平自身だった。 「ボクばかり恥ずかしいカッコさせてズルいよ。ボクも聖くんの恥ずかしいところ見たい……」  今度は、秀平が聖の股間に手を伸ばす。  ところが聖は、秀平の手を振り払って身体を離した。  その目に恐怖が浮かんでいる。 「えっ? 何で……」  秀平は、聖の思わぬ反応に困惑した。  聖は慌てて言い訳する。 「ゴメン……イヤじゃない。イヤじゃないんだけど、ここでは……」  秀平は落胆の表情でうなずくと、怒りを鎮める気配すらない魔獣を、無理矢理トランクスの中にネジこんだ。 「そうだよね、こんな外でなんて……デリカシーなくてゴメンね」  聖には、秀平を挑発したのは自分だという自覚があった。ここまで怒張したソレが中途半端では、どれほど辛いかも身を持って知っている。  だが聖は、言い表しようのない恐怖と不安に、ただ謝るしかなかった。 「ゴメンなさい……ゴメンなさい……」

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