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第17話 腐女史

「女史……ゴメン。こんな遅くに」 「いいわよ、まだ勉強してたから。だけど、つまらない話なら、明日学校で覚悟するように」 「じゃあ、殴られちゃうかな」 「秀平くんの事じゃないの?」 「そうだけど……」 「それなら、つまらなくなんてないわ。で? 今日はまた大人の階段を一つのぼったんでしょ。何て尊いのかしら」 「何でもお見通しなんだね。もう説明しなくてもいい感じ?」 「いつもの公園ね。秀平くんに限って、歯止めが効かなくなるなんて事ないと思うけど」 「歯止めが効かなくなったのはオレなんだ。秀平のが、焼けた鋼鉄の棒みたいに熱くて固くて……ステキだったから」 「ま、大胆。それで、それで」 「ガマンできなくなって……お口に含もうとしたの」 「おっと、初フェラね。おめでとう」 「ううん、それを秀平が寸前で止めたんだ。指先で触っただけでビクンビクンしていたから、イク寸前だった筈なのに」 「秀平くんも童貞だしね」 「そしたら……オレのを見たいって」 「うわぁ、エッチ。公園で見せ合いっこしたの。想像しただけで濡れちゃうわ」 「ううん。怖くなって、逃げたんだ」 「えっ? 何で?」 「だって、オレのもギンギンだったし、そんなの見られたら嫌われる……秀平、オレの中に女のコを重ねていると思うから……」 「まあねぇ……ノンケと付き合うと、そんな悩みもあるのよねぇ」 「ノンケ?」 「異性愛者のことよ。だけど、文化祭の時にも言ったけど、秀平くんは聖くんの全てを受け入れて愛していると思うの。今さら勃起したチンポなんかで動じないと思うけど」 「そう……かな?」 「そうよ。それより、イク寸前でおあずけ食らって、秀平くん、かわいそ過ぎるわね」 「かわいそうだよね」 「よくガマンできると思う。やっぱり愛よ。愛があるからガマンできるのだと思う。聖くんは、その愛に甘えちゃダメよ」 「うん」 「男同士でどうやって愛し合えばいいのか、不安だと思う……そうだ。明日、学校に参考書持って行くわ。それで予習すれば、少しは心に余裕ができると思うから」 「参考書?」 「マンガだけど、シチュが聖くんと秀平くんに似ているの。親友同士の友情が高まって恋愛に変わってね、戸惑いながら二人だけの愛の形を探していく、みたいな」 「女史って、腐女子だったんだ」 「否定はしないわ。だけど、好きなマンガがたまたまBLだっただけよ。出会って2ページ目でセックスするような、ありふれたBLは嫌いだから。このマンガはね、世間の常識や偏見に振り回されないで、自分達のセックスを見つけていく、尊いマンガなの」 「ああ、やっぱりセックスするんだ」 「そりゃあ、BLはBLだから」 「ありがとう、女史。何か凄く参考になりそうだよ」 「どういたしまして」    電話を切った後、沙奈恵はタメ息をついた。 「あーあ、試験前はオナ禁のつもりだったのに……」  机の引き出しを開け、テーマパークに行った時に買ったチョコクランチの缶を取り出す。中のお菓子よりも、キャラクターがプリントしてある可愛い缶が目当てで買ったものだ。  だが、そこから出てきたのは、グロテスクな形状の女性用アダルトグッズだった。  沙奈恵はベッドのヘッドボードにクッションを置くと、それにもたれかかって座る。そして、パンツを脱いで両脚を開いた。  スイッチを入れると、繊細な振動と力強い回転運動が始まる。  先端を、一番敏感な突起に軽く押し当てた。  ここ数日自制していたので、立て続けに二回イク。  脳裏に浮かぶのは、秀平の赤黒く勃起したモノを、細く美しい指先でもてあそぶ聖の姿だ。  そして、聖はソレを咥え、ゆっくりと頭を上下に揺らす……。  沙奈恵の中は、ローションの必要がないほど濡れていた。  ゆっくりとバイブを挿入する。 「ウン……」  声を必死に押し殺す。  小刻みにバイブを動かし、スポットを求めて掻き回した。 「ア……アッ……」  いつの間にか妄想の聖はベッドの上で四つん這いになり、後から秀平に攻められていた。 「ああ、イキそう……イキそうなの……ねえ女史、一緒にイコ。ああ、イク!」  妄想の聖が叫ぶと同時に、沙奈恵もこの日一番の絶頂に達した。  朦朧とする意識の中で沙奈恵は思う。 ——私こそ最凶最悪の腐女子だわ。

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