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02 理解できない、けど。

※望月視点 「お兄ちゃんはこんなに成績がいいのに、どうして奏多は──」 「奏多もお兄ちゃんみたいになりなさい」 幼い頃からずっとずっと言われてきた。 全てにおいて兄と比べられ、どれだけ頑張っても母親は褒めてくれない。 クラスで一番良い点数をとっても 「お兄ちゃんは満点だった」 図工で作成した作品が賞を受賞しても 「お兄ちゃんは最優秀だった」 体育で一位になっても 「お兄ちゃんの方が全ての競技において優れていた」 なんて。全てが兄を基準に評価されて、どれだけ頑張っても頑張っても、追いつけなかった。 最初は褒められたくて、追いつきたくて、ずっとずっと背中を追いかけた。 でも、追いかけても追いかけても兄は決して止まってくれなくて。悲しくて辛くて怖くて、潰れそうになった時に、ずっと俺を見てくれていた双子の妹・奏が、『奏多は凄く頑張ってるよ』と言ってくれた。 その言葉をきっかけに、俺は兄を目指すのをやめて妹だけを大切にする生き方に変えた。 医科大学の附属する中学へ進学するように勧められたが、自分が自分らしく居れることを優先した俺は、初めて両親に逆らった。そこから俺は、完全に両親から期待と共に、愛を失った。そう思ったのは、この時を機に俺のする事に一切口を出さなくなったから。 奏は初めての女の子だからか、何もしても許されていて。それでも俺は唯一自分を認めてくれた奏を妬む事はなく、この子だけを大切にすることを決めた。 親からの関心も愛も失ってはいたが、ある程度の学校は卒業したかったので、進んだのはそこそこの進学校。小さい頃の努力と親の遺伝子があるからか、少し勉強すれば首席を取る事が出来た。 目立ちたくはないが、首席で居続ければ両親も文句を言わないだろうと思い、成績を維持し続けた。 仲良くしたい奴も居ない。誰かと仲良くなる気もない。そんな俺がクラスに馴染めるわけもなく、適当に一人で過ごしていると、やけに笑顔を振り撒くクラスメイト──瀬野 千明の事が気になった。 (あいつ、まじであんな性格なの?) 友人に囲まれて楽しそうに笑う姿を見て、少しだけ興味が出た。 (学校もつまんねーし、あんな真面目チャンをぐちゃぐちゃにしたら楽しそう) 性格が荒んでいた俺は、そういう思考であいつを観察するようになった。 そんなある日、使われていない準備室で時間を潰していると、瀬野が一人でやってきた。 (こんな所に何の用だ?) キョロキョロと人が居ないか見ていたようだが、すぐに鞄から雑誌を出すと、まさかのまさか。 (え?まじ?オナってんの?やば…) 人気者の瀬野からは考えられない性癖に驚いたが、それと同時に黒い考えが浮かんだ。 スマホで撮影した後に声をかけると、絶望した表情を見せた瀬野。その顔を見て、心の奥底からゾクゾクした。 (もっと歪ませたい。真面目でいい子で、何不自由なく生きてるような奴を、めちゃくちゃにしたい) 俺にとっても初めてだったが、それ以上にコイツの初めてが欲しくて、足で扱いた後に写真をネタに脅して無理矢理行為を進めていった。 最初は嫌がっていたかと思ったが、指で慣らし始めると、期待したような瞳で見つめてきたので──。 俺は瀬野で童貞を卒業した。キスも、愛し合うような言葉も、何もない。それでも何故か嬉しそうな瀬野の顔が見えて、少しだけドキッとした。 こうやって、奏以外にじっと顔を見られた事なんてなかった。瀬野の瞳に映る自分が見えるくらい近い距離に居るのが恥ずかしくなって体を引き離した。 身なりを整えて去ろうとしたら、ガシッと勢い良くしがみついてきた瀬野に驚いていると、更に驚くような言葉が耳に届いた。 「何でもするからまた抱いて欲しい」 そのあり得ない言葉に目を見開くと、瀬野が縋るように足に抱き付く腕に力を込めてきた。 「連絡先、教えて…」 自分を犯してきた相手の連絡先を聞く理由が分からないが、こいつの顔を見ると何か企んでいる様子はなく、本当に俺と繋がりたいだけだと言うのが分かった。 (…仲良くなったら調子狂いそうだし) 「別にいいけど、お前から連絡してくんなよ。うざいから」 そう釘を刺して連絡先を交換した。 そのまま軽く足を払うように動かしてから準備室を後にした。多分当分動けないだろうから誰も入ってしまわないように近くで待機した。 数分後に重たそうな体を引きずって出てきた瀬野が見えた。しんどそうにしながらも、何処か嬉しそうな顔を見て理解に苦しんだ。 (ただの遊び相手だと思って深く考えないでおこ) そう思いながら、俺も瀬野に気付かれないように学校を出た。 →

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