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03 呼び出し
あり得ない事が起きたあの日から、連絡もなければ学校でも目さえ合わせてくれない。
今まで喋った事のない俺が突然話しかけても迷惑をかけるだけだろうと思い、我慢して今まで通り休み時間の度に席に来てくれる友人と楽しく学校生活を送った。
あんなに苦しかった人との付き合い方が、望月くんにめちゃくちゃにされた日から吹っ切れたかのように何も思わなくなった。三大欲求の内、性欲という一つが満たされたからなのか分からないが、心はいつも晴れやかだった。
放課後に準備室へ行っても姿はないので、一度も接する事なく休日を迎える事になった。
休日、初めて望月くんからきたメッセージは、彼らしいとても短い文章だったのだが、内容が少しだけ恋人を彷彿とさせるものだった。
【会いたい】
(え?あ…会いたい?とは?)
顔が熱くなったのが分かり、すぐに返信出来ずに居ると、追加でもう一通のメッセージが届いた。
何処かの住所が書かれており、その後に【来い】とだけあった。
(この住所、望月くんの家かな…?)
住所を確認すると自転車で数十分の所だったので、意外にも近い。俺は母親に声をかけてダッシュで指定された場所へ向かった。
スマホのマップでは15分と書かれていたが、約5分くらいで到着すると、望月くんはまたもや驚いた顔をしていた。
「…来いとは言ったけど早すぎ」
かなり大きな家から出てきた望月くんは、入ってと言って中へ案内してくれた。クラスの子達が言ってたけど、両親はお医者さんらしいので自宅もかなり立派だった。
(…けど凄い静か)
広いから余計そう思うのか、しんと静まり返った室内は何処か淋しげだった。階段を登ってすぐの部屋に案内されると、そこはとても殺風景で必要最低限の物しか置かれていなかった。
「望月くんの部屋?」
「そんなのどうでもいいだろ。裸んなってベッドに寝て」
「…うん」
たったそれだけの会話だったが、望月くんと話せた事が嬉しい。少し恥ずかしかったが服を全て脱ぎ、綺麗に畳んでベッドの下へ置いて、綺麗なシーツの上に寝転んだ。
微かに香る望月くんの匂いが嬉しくてすりすりとシーツに顔を埋めて居ると、寝転んだ俺の上に覆い被さってきた。
「あんま顔擦り付けんな」
「…ご、ごめんなさい」
謝罪をすると、カチャンと首に違和感が走った。
「な、に?これ」
「首輪。お前は俺のペットな」
意地悪な笑みを向ける顔を見て、ぶわっと身体中が熱くなった。
(ぺ、ペット……俺が、望月くんの)
本来なら賛否が分かれるであろうその言葉は、俺にとってはとてもご褒美のようで。
ペットなら、ごちゃごちゃ考えなくてもいい。主人から無償の愛をもらえる存在じゃないか。今まで色んな事を考えてパンクしそうだった頭を、空にしていいんだ。
「随分嬉しそうだな」
「うん。だって、望月くんのペットになれるなんて最高に嬉しい。めちゃくちゃに抱いてよ。俺ね、この前何も考えられないくらいに気持ち良かった」
「…ん、分かった」
首輪はただ付けられただけで、何処かに繋いだりするわけでもない。それでも「望月くんのペット」と認識するには十分だった。
(…特にキツイわけでもないのに、付けられてるだけで気持ち良い)
心の中で思った瞬間、望月くんの愛撫が始まった。
カプリ、と前回と同様に甘噛みからスタートする行為。少し違うのは今回は首ではなく鎖骨辺りだった。小刻みに歯を動かされると、気持ち良いというよりも擽ったい感覚が勝ってしまう。
「──ふ、っ……ふふ……」
「……」
俺が行為中に似つかわしくない声を出したからか、望月くんはすぐに鎖骨から離れて胸元へ唇を落とした。
しかし。
「…~~ッッ!!」
乳首を愛撫されても擽ったさだけしか感じない。不快にさせたくないので笑い声は必死で我慢したが、体はどうしても暴れてしまう。
そんな俺の体を押さえつけて、乳首を舌で転がされると危うく大爆笑しそうになった。
「っは、ァッ…も、ちづき…くッ」
それでも必死に笑いを堪えてひたすら乳首を愛撫されていると、次第に体に変化が訪れた。
最初は優しかった愛撫が、激しいものへ変わっていき、直接股間に熱が送られる感覚になった。
カリッと少し強めに乳首を噛まれると、優しく舐められていた時とは違いめちゃくちゃ気持ち良い。
「あっ!…ぁっ、望月くん…もっと、噛んでぇ…」
ぎゅっと望月くんの体に手を回そうとすると、触んなと手を叩かれたが、そんな扱いをされると余計自分が人間ではなく物みたいに思えて嬉しかった。
物なら別に、取り繕わなくていい。色々と考えなくてもいい。だって物に感情なんてないんだから。
極論に至った俺はぞんざいに扱われる事に喜びを見出してしまう体になっていった。
「あッ、あっ…んん、もっと噛んで…っ痛く、してぇ」
甘えた声でそうおねだりしても、これ以上はダメだと思ってくれたのか、強さは変わらない。普通の人からしたら痛みしかないであろう強さで噛まれても、俺には快感としか思えない。
乳首をキツく愛撫される事によって股間は完全に勃ち上がり、望月くんの布団にトロトロと先走りを垂らした。
「…入れるよ」
「うん…っ、あのさ、この前みたいに、激しくして…お尻が、切れなければ…どんだけ痛くてもいいから」
「分かった」
近くに用意してくれていたローションを手にした望月くんは、指にゴムを被せるとゆっくりと挿入してくれた。
生活する上で尻が切れるのは嫌だ。俺に痛みを与えていいのは望月くんだけ。
(いや…でも今ここで切れても原因は望月くんだからいいのかな。でも終始痛いのは嫌だしなぁ)
どうでもいい事を考える自分が、少し面白くて。
今までは誰かのために、どうやって接したらより喜んでもらえるだろう、とか。そういった事ばかり考えていたので、初めて自分の事をじっくり考える事が出来た気がした。
気が付けば指は一本軽々飲み込んでいて、それが嬉しくてきゅう、と後孔に力を込めた。
「男でも感じる場所あるんだって」
卑猥な音を立てながら指が動くと他とは感じ方が違う場所を擦られた。
「ッあ!」
「ここ?」
「た、多分っ、そこっ…あ、ぁ…んんっ!ぁ、」
激しめに擦られると、背中がのけ反りぎゅうっとシーツを握り締めた。
「へぇ。すげーな。体のこと調べておいて良かった」
(俺のために調べてくれたんだ……)
その言葉にキュンとすると、望月くんはその反応を不快に思ったのか指を増やしてゴリゴリと力を込めた。
「はぁぁあっ!!き、もち"っ、いいいい!もう…もう指はいいからぁ…っ、痛いのが、いいっ、苦しいの好き……入れて!いれてっ……」
実際今までは痛いことなんて好きじゃなかった。でもそれしか考えられなくなると知ってから、痛みが快感に変わった。
「…」
俺がどれだけ強請っても、望月くんは指を三本くらい入るようにならないと入れてくれなかった。
三本余裕で飲み込む事が出来た頃、指が抜かれてずっと欲しかった望月くんの物が当てがわれた。覆い被さるような体位で、すぐ近くに望月くんの体温を感じる。
グッと強い圧迫感が襲うと、反射的に縋りたくて望月くんの体にしがみついた。
触んなと振り払われる事もなく、逆に優しく俺のことを抱き締めてくれた。それが堪らなく嬉しくて。
「はっ、ぁぁっ、望月くんっ、望月く、…気持ちいいっ、気持ちい、望月くん…んっ、んん、」
必死に名前を呼びながら求めると、応えるように腰の動きを激しくしてくれた。しっかりと慣らしてくれたので痛みはなく、挿入当初感じていた圧迫感はすぐに快感になった。
「望月、くんっ……」
「…呼びすぎ。何だよ」
「顔、見たい…っ、見せて、」
「自分からしがみついてきといて」
困惑しながらも体を離してじっと俺を見つめる望月くん。その表情はとても気持ち良さそうで、頬が紅潮していて余裕がない。
「…か、っこいい。望月くん。気持ちい、望月くん…!望月、くっ」
「も、お前一回黙れ」
そう言って目を逸らすと、もう喘ぎ声しか出せない程に激しく抱かれる事となった。
◇ ◆
「気持ち、良かったぁ…」
情事を終えて放置された俺は、すぐに動く事は出来なかったので望月くんのベッドでゴロゴロとしていた。
「落ち着いたらとっとと帰れよ」
「うん、もう少し待ってね。体が動かないから」
頑張ればもう帰れるが、少しでも望月くんの香りに包まれていたくてシーツに顔を埋めた。
(望月くんはこの部屋で、いつも何してるんだろう。普段どんな事を考えて生きてるんだろう。俺には考えられないような事を思っているのかな。今日呼び出してくれたのはたまたまなのかな。休みの日はこれからも呼んでくれるんだろうか)
きゅっと、シーツを握り締めて、俺はずっとそんな事を考えていた。
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