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04 準備室で
「千明、最近楽しそうだね」
家で食事をしていると、唐突に母がそう言った。
「そう?」
「うん。高校生になってから少しだけ疲れてるように見えたから心配してたんだけど」
「え、本当?…いや、実はさ。学校に気になる子が出来て」
「まあ」
「その人の事を考えてると、学校が楽しくて…最近よく土日に出かけてるのはその人と遊んでるからなんだ」
初めて休日に呼び出されたあの日から、土日のどちらかは必ず体を重ねている。望月くんも俺の体に慣れてきて、会話なんて殆どないけど、会えるだけで幸せだった。まさかそれが顔に出ていたのは恥ずかしい。
「そう…本当に良かった。上手くいくといいわね。千明は優しいからきっと相手のことは大切に出来てるとは思うんだけど──」
「うん…?」
「自分の事も大切にしてね」
「え?」
「あなた、いつも人の事ばっかり考えて頑張っている気がして。それはとても誇りだけど、やっぱり少し心配だったの。…ちゃんと自分の事もきちんと大切にしてあげてね。今更だけど、それがずっと言いたかったの。でもタイミングが分からなくて…」
初めてそんな事を言われて驚いたが、ちゃんと母は俺のことを見てくれていたようで、それも凄く嬉しかった。
「…俺、さ。ずっと母さんみたいに、相手のことを思いやれる優しい人になりたかった。でもいつしかそれだけが目的になって。正直高校に入ってから人付き合いに疲れてきて。…周りのみんなはいい人だから贅沢な悩みだけど、俺にとっては大きな問題で。そんな時に気になる人に出会って。その人はしっかりと自分を持ってて格好良くて。…その人と居る内に、俺も相手のことだけじゃなくて自分のこともしっかりと考えられるようになったんだ。だから人付き合いもそんなに今は辛くないし、毎日楽しい」
照れくさかったが、今までの事を伝えると、母は瞳を潤ませながらも話を聞いてくれた。
「そうなんだね。…本当、その人は素敵な方なのね。いつかお母さんにも紹介してね」
「う、うん」
流石に紹介出来るはずもないが、ニコッと微笑んで話を終わらせ、後片付けを済ませて自室へ戻った。
「言葉一つで望月くんの評価爆上がりだな」
スマホを開いて望月くんの画面を見ていると【今から来い】という文字しかない。
それでも嬉しくて、休みの日が楽しみで。俺はこの頃には既に望月くんにどハマりしていた。
◇ ◆
「千明ってそのミルクティー好きだよな」
昼休みに、仲の良い友人達といつも通り食堂へ行ってご飯を食べていると、一人の友達にそう言われた。
食堂の中に設置されている自販機でしか見たことのないミルクティー。
一度飲んでからあまりの美味しさにハマってしまい、俺は殆ど毎日飲むようになっていた。
「うん。凄く美味しいんだ~でもあの自販機、学校でしか見なくてさ。ついつい買っちゃうんだよね」
「へぇ~俺も今度買ってみようかな」
「うん、買ってみなよ。美味しいよ」
何気ない話で盛り上がって昼休みを過ごし、午後の授業が終わって放課後になった時にブルっとポケットの中でスマホが振動した。
【準備室】
とだけ書かれた望月くんからのメッセージに「?」と思った。
(もしかして来いって事?)
学校に居る時に呼び出された事がなかったので慌てて準備室へ走ると、「遅い」と冷たい口調で言われた。
「ご、ごめん……帰る準備してたし、ちょっと…意味が分かんなくて…準備室に来てって意味だったんだね」
「俺がメッセージ送ったらすぐに来い。言い訳すんな」
「…は、はいぃ…」
相変わらずきつい口調なのに、何故か望月くんに言われると胸が高鳴る。
「で……どうしたの?」
「俺が呼んだらやる事は一つだろ?--舐めろ」
「は、はいっ……!!」
準備室に置かれた机に座った望月くんの股間に合わせて中腰になると、チャックをずらして萎えているモノを取り出した。
(可愛い…ふにゃふにゃ)
普段は勃った所しか見た事がなかったので、とても新鮮だった。俺を見下ろす格好良い顔に似合わない小さなソレを咥えると、少しずつ口の中で反応し始めた。
何度かフェラさせられてきて分かったが、望月くんは裏筋が弱い。舌を使って裏筋を舐めると、きゅっと力が入ったのが分かった。
(嬉しい…俺に感じてくれてる)
口の中で大きくなればなる程に、いつもそう思う。望月くんが感じるのは俺だけがいいな。俺以外にこんな事させてないといいな。
でも土日は必ず一緒だし、学校で誰かと話してる姿なんて見ない。それで少し安心する自分が居て。
「…もっと強く舐めて」
「んん…」
「しんどくなかったら奥まで咥えて」
「しん…ろくなぃぃ…ねぇ、頭っ、押さえて、奥まで…咥えさせて……?」
「──煽ってくんじゃねーよ。余計な事喋んな」
ガッと頭を押さえつけると、奥まで咥えるように動かしてきた。
「ん"ッッ、」
えずいてしまいそうになる程の苦しさに涙が滲んだが、更に望月くんのモノが大きくなったのが分かると苦しさも喜びに変わった。
指示されていないが、望月くんのもう一つの弱点の二つの玉を撫でてみると、ビクッと体が跳ねたのが分かった。
「よ、けいな事…すんな。手、離せ」
「やらぁ…気持ち良く、なって……」
「……ッ、出る。飲め」
「はぃ……」
小さく体が跳ねた後、喉の奥に伝わる生温かい感触。吐き出された望月くんの欲を全て飲み込むと、頭を解放された。
ただ押さえつけられていただけだったが、頭を触られると撫でられているような感覚がして嬉しかった。
蕩けた瞳で見上げると、同じく頬を染めて少しだけトロンとした望月くんと目が合った。すると恥ずかしくなったのかフイと顔を逸らされた。
(格好良いのに、可愛い──)
「…お前、フェラだけでいいから。手は動かすな。次はヤるからな」
身なりを整えて帰る準備をしている望月くんを見ると、鞄の中にはローションやゴムが入っていたので最後までやるつもりだった模様。
(あぁ…俺がやめなかったからイッちゃったんだ。可愛い。あー…学校でまたしてみたかったな)
そう思いながらも別々で準備室を出るかと思い待っていると、頭に冷たい物が置かれた。
「…?何、これ……え?いいの?」
「次は呼んだらすぐ来いよ。またな」
頭の上に、俺が大好きなミルクティーを置いた望月くんはまだ少しだけ火照った顔のまま準備室を出て行った。
「……」
今日、お昼休みに話してた会話を聞いてたのかな。そういえば望月くんってお昼は何食べてるんだろ。誰かと一緒に食べてるんだろうか。
望月くんは何が好きなのかな。
望月くん──。
まだまだ知らない彼のことを知りたいと思いながら、まだ冷えているミルクティーにストローを差して口に入れた。
喉を通るミルクティーはいつも以上に甘くて美味しかった。
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