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07. 崩れた日常と新しい友達 ①

 時は流れ、おれ達は高校三年生になった。  一年生のクラス分けは、オメガとベータが同じで、アルファだけが別だったが、二年生からはそれぞれの二次性にクラスが分けられていた。  クラスは違っても朝の光景は変わらずで、おれは蒼人(あおと)の膝の上に座りその隣には太陽(たいよう)がいて、談笑する日々。そんな穏やかな時間が好きだった。  はじめは気にしてチラチラとこちらを見ていたクラスメイト達も慣れたのか、朝の教室の一コマとしてすっかり馴染んでいた。 「しばらく、休学することになった」  このまま変わらぬ日々が続くと思っていた、そんなある日のこと。着席してすぐ神妙な面持ちで蒼人が口を開いた。  普段はおれと太陽の会話を側で微笑みながら(いや、周りから見るとほとんど表情の変化はないみたいだけど)聞いているのに、今日は話があるから早く登校したいと言われた。教室にはまだ誰もいないような時間だった。 「え? どういうこと?」  想定していなかった言葉に、おれは思わず聞き返した。  高校三年生と言ったら、大事な時期じゃないか。そんな時に休学するって、おかしくないか? しかも急にだ。 「事情があって理由は言えない。けど必ず戻ってくるから、待っていてほしい」  蒼人の表情は見えないけど、おれの腰を支える腕に、きゅっと力が入ったように感じた。  兄弟同然のおれでも相談出来ないことなのか。……それとも、相談するに値しなかっただけか。  いや、そんなわけないよな……。  心によぎった嫌な考えを打ち消すように軽く首を振ると、努めて明るい声をかけた。 「海外に留学するとか? うーん、でもそれを隠す意味分かんないしなぁ。……なあ、おれにも言えないこと?」 「……ごめん」  耳元で聞こえるその声は、心なしか少し震えているような気がした。先程よぎった嫌な思考が本当かもしれないと思ったら、それ以上何も聞けなくなって、そのまま口を噤んでしまった。  お互いに何も言葉を発することもなく、かといって立ち上がってその場を離れることも出来ずにいた。おれ達の間に、こんな異様な空気が流れたのは初めてだった。  蒼人が学校に来なくなったのは、話を聞いてからまだ三日しか経っていない、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした曇り空の日だった。  前日の学校の帰り道、前触れもなく『明日から休む』とだけ告げられた。蒼人の淡々とした口調に『……そっか』と、そっけない短い返事しか出来なくて、それ以上の会話が続くことはなかった。  次の日から休学してしまうなら、せめて普段と変わらず他愛もない話で笑い合いたかったのに、何も出来ずに、気まずい雰囲気のまま蒼人は休学した。

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