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14. 担当医の話によると ②
その後、うーんとね……。と、少し躊躇するように言葉を濁しながらも、深呼吸してから再び口を開いた。
「今回の事例はね。……厄介なことに、発情誘発剤によるものみたいなんだ」
「……えっ?」
発情誘発剤? 誰が? なんでおれに?
先生からの予想外の言葉に、心臓がバクバクと音を立てる。
「一緒にいたお友達が、オメガタクシーを呼んでヒート対応ホテルで休ませてくれて、その時にホテルで特効薬を打ったけど効かなかったそうなんだ。……薬によって強制的に引き出されたヒートには特効薬が効かない上に、副作用も出てしまうんだよ」
「そう、なんですか……」
だから、蒼人も先生も、あんなに気持ち悪いところは無いかと聞いてきたのか……。
「今は、警察が介入して調べているところだよ。麻琴くんも体調が落ち着いたら、少し話を聞きたいと言っていたよ。……もちろん、まだ無理はしなくていいからね」
「はい……」
まさか警察沙汰にまでなっているとは思わず、愕然とした。
たまたま外出先で、体調を崩してしまっただけだと思っていたのに。
「まだ分かっていないことのほうが多いし、あれこれ考えすぎないようにね」
そこまで話した後、さてと……と言って、ちらりと蒼人の方も見る。
「蒼人くん。……ちょっと席を外していてくれるかな? 麻琴くんだけに話したいことがあるんだ」
そう言われた蒼人は、「30分くらいしたら戻ってくるから」と言いながらおれの頭をぽんぽんと撫で、静かに病室を出ていった。
先生は念の為にと部屋の扉を開き外を確認する。蒼人が変なことをするわけないのにと思うけど、わざわざ蒼人を外に出したのには理由があるはずだ。
部屋を出ていったのを確認すると、改めておれのそばに来て、そこにあった椅子へと腰掛けた。
おれの担当医の春岡先生は、男オメガだ。基本的にはオメガにはオメガの担当医が付くことになっている。たまにベータの医師になる場合もあるが、アルファは絶対にない。
小学校入学時検診で初めての第二次性検査があり、その後中学、高校、大学と、進学する度の検査が義務付けられている。
オメガと判定が出たら専門病院で検査、そこでもオメガと出た場合には、即日担当となる医師が決定される。
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