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17. これからのことと見舞客 ③
部屋を出る蒼人を見送ると、ふぅ……と小さくため息が出てきた。蒼人の言う通り、色々な情報がいっぺんに入ってきて、疲れてしまっているのかもしれない。
目を閉じると、枕に吸い込まれるかのように、あっという間に眠りへと落ちていった。
しばらくして意識が浮上してくると、遠くの方で僅かに話し声が聞こえてきた。そして小さなノックの音がする。
「麻琴くん、起きてる?」
返事がないのなら、そのまま帰ろうとしていたのか、控えめに声がかけられた。この声の主には心当たりがある。
「はい、起きてます」
おれはしっかりと目を開け、ベッドの上へと身体を起こした。少し寝たせいか、だいぶ頭もスッキリしている気がする。
声の主はおれの返事を確認すると、静かにドアを開けて部屋の中へ入ってきた。
「蒼人から連絡をもらってね。疲れてるかなと思ったんだけど、荷物だけでもと思って持ってきたんだ」
遠慮がちにそう言いながら側に来たのは、森島紅音 さん。蒼人の母親で、おれにとっても母親と同じ存在の人だ。
「わざわざすみません。ありがとうございます」
「いいんだよ。気にしないで。荷物だけ置いたらすぐ帰るから」
「でも、せっかく来てもらったのに……」
「もう少し入院するんだろ? 落ち着いた頃にまた来るよ」
やっぱり親子だよなぁ。蒼人と同じように、おれの頭をぽんぽんっとすると、手にしていたバッグを空いてる棚へとしまった。
「寂しくなったら、この中の物を使うといい。そのために持ってきたんだから、遠慮しないで」
中身は何かと尋ねたら、蒼人の私物だと言った。えっ? と驚くおれに、大丈夫だから、困ったら先輩に相談しなさいって、笑いながらもう一度頭をなでてくれた。
蒼人の母親は男オメガだし、おれの気持ちもきっとバレているのだと思う。
少し恥ずかしいけど、ありがとうございますと素直にお礼をいうと、うんうんと満足そうに微笑んでから部屋を出て行った。
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