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18. 友達からの電話 ①
見舞客も来ない時間になった頃、夕飯が運ばれてきた。
身体への負担を考えられた優しいメニューだし、量も控えめになっていた。それでも半分ほど残してしまった。
次の日朝早くからやってきた蒼人 にそのことを話したら、蒼人の過保護がさらに増してしまった。食べることの大好きなおれが、食事を残すなんてことはめったになかったから。
軽く散歩でも行けばお腹も空くかもしれないのに、休んでいろとベッドへ戻される。……多分、それも原因じゃないかと思うけど、心配そうにこちらを見る蒼人には言い出せなかった。
「毎日こうやって来るけどさ、大丈夫なのか?」
「何が?」
「何がって……。やることがあるから、休学してるんだろ?」
「……ああ、そのことは大丈夫。麻琴 は心配しなくていい」
休学すると聞かされた時、蒼人は詳しい話はしてくれなかった。今だって聞いたところで話してくれるとは思っていなかったが、やっぱりその気はなさそうだ。
兄弟みたいな幼馴染という位置にいることすらも、許されないということなのか。
それなら、なんでこんなに過保護にするんだよ。……放って置いてくれたらいいのに。
少し投げやりな思考回路になってしまい、ブンブンと首を振った。蒼人は純粋に、完全に体調の戻らないおれを心配してくれているだけじゃないか……。
「麻琴? やっぱり具合が悪いのか? 俺がいると休まらないなら、部屋を出ていくけど」
蒼人はずっと口数が少ないと思っていた。常に一緒にいたおれでさえそう思っていたのに、あのヒート事件以来別人かと思うくらいによく喋る。そして、おれを過剰に心配しては甲斐甲斐しく世話をする。
「蒼人ごめん。おれ、ちょっと寝るわ」
眠くもないし、寝るつもりもない。
けれど、胸の中にくすぶる気持ちがどうしても正常な思考を邪魔するようで、このままだと蒼人に八つ当たりをしかねない。
それならば、少しの間蒼人との距離を取ろう。そう思った。
布団を頭から被り、丸くなる。
本当は側にいてほしかったけど、『お願いだから、早くここを出ていってくれ』と、罪悪感の中でそう願った。
いつの間にか目尻に溜まり始めていた涙が、溢れ出てしまいそうだった。
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