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18. 友達からの電話 ②
「ゆっくり休めよ」
布団の上からぽんぽんと撫でると、反応のないおれにそれ以上何も言わずに、静かに部屋を出て行った。
扉が閉まる音を確認したものの起き上がる気にはなれなくて、そのまま布団に潜っていたらいつの間にか眠ってしまった。
結局お昼も食べる気になれず、そのまま下げてもらい、午後も布団をかぶったまま過ごしていた。ウトウトと浅い眠りと覚醒とを繰り返す。
今は何時だろう……。そう思ってモゾモゾと布団から出てくると、ちょうど春岡 先生が病室に入ってくるところだった。
「ああ、ごめんね。起こしちゃったかな」
午前中は外来の診察で、午後は入院患者の診察をしてくれる。いつもおれのところに来るのは15時くらいだから、時計を見ることなく、大体の時間を把握した。
「ちょうど起きたところなんで、大丈夫です」
よいしょっと言いながら身体を起こすと、大きく伸びをした。
ゴロゴロしてたし、蒼人が側にいないから余計なことも考えずに済んだからか、少し心が軽くなったような気がした。
『蒼人が側にいないから』……自分で思った言葉に、小さなショックを受ける。こうやって、蒼人のいない生活が当たり前になっていくのかと思うと、胸が苦しくなった。
春岡先生は、体温を測ったり問診したり聴診器を当てたり……と、淡々と診察をこなしていく。そして一通り終わったところで、少し言い出し辛そうにおれを見た。
「麻琴くんのお友達からの電話を保留してあるんだけど、話せる? 疲れてるようならまたかけ直してもらうけど」
「……友達?」
「佐久 くんと、飯田 くん」
「あっ……」
入院期間中は余計なことを考えてしまうから、スマートフォンは預けてある。だから連絡を取りたい場合は、直接病院に電話をするようになっていた。
入院して少し落ち着いた頃、二人には一度だけ連絡をした。特に佐久くんには迷惑をかけてしまったから、どうしても謝りたかった。
それでも面会となるとまだ心の準備が出来ていなくて、遠慮をしてもらっていた。
「……少し、くらいなら」
おれの複雑な心の中なんて知らない二人は、ただ単に友達として心配をしてくれているだけなのは分かっている。だから流石に断るのも悪いと思って、電話に出ることにした。
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