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24. 社会科の先生のヒート ②
程なくして、ドタバタと階段を駆け上がってくる足音がした。なんだろうと気になって教室の外に出ると、悲鳴にも似た声がする。
「っ! い、いやだっ! ……くる、なっ!」
誰かから逃げているのだろうか。息を切らしながらやっとやっとで階段を登ってきたのは、社会科の夏丘 先生だった。
泣き声に近い叫びとともに漂ってきたのは、ミントのような爽やかな香り。
「夏丘先生!!」
慌てて先生に近寄り腕を掴む。そんなおれに気付いて顔を上げると、走ってきたからではない、明らかに違った頬の赤みと、苦しそうに大きく息をする先生。
近付くとよく分かる、これはヒートだ。でも何故? 先生はベータだったはず。
困惑してしばらく動きを止めていると、先生を追いかけてきただろう人物が現れた。
そこにいたのは、おれのよく知る人物。
でも、どう見ても様子がおかしい。フーフーと粗く息をしている。
いつもの優しい目は見る影もなく、獰猛な獲物を狙う獣と化していた。
「佐久 くん!」
先生を背後に庇いながら、佐久くんに声を掛ける。
「オメガ……オメガ……」
瞳孔は開き、焦点は定まらずに、フラフラしながら近付いてくる。
「佐久くん! しっかりして! ……だれか、誰か来て!!」
どれだけ声を張り上げても、佐久くんには届かない。
周りに助けを求めたくても、誰もいない。
ここは、めったに人の来ない、第二校舎の二階の奥まった場所だ。
それを理解した途端、一気に体が震えた。
このままだと、先生が危ない。
どうにかしなければと、あれこれ思考を張り巡らせた。
そうだ!
すぐ隣にセーフティールームがあるじゃないか。そこへ逃げ込めば良い。
夏丘先生はヒートを起こしているから、認証が通るはず。
急いで先生の腕を掴んで方向を変えて、セーフティールームに走り出そうとした。
……なのに、先生は立ち止まったままそこから動かなかった。
「先生! 何してるんですか! 逃げますよ!」
ぐいっと引っ張るけど、やはり動かない。
どうしたのかと振り返って先生を見ると、佐久くんと同じで焦点が定まってない。
ヒートが悪化している!!
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