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27. 事の真相は ①
「まず……。喫茶店でのことなんだけど。あの日麻琴 の飲み物に発情誘発剤を入れたのは、喫茶店の店員なんだ」
「え……っ? なんで……」
見ず知らずの店員に恨まれるようなことでもしたんだろうか。どう考えても、全く覚えがない。
自慢できる生き方をしてきたと胸を張れるかと言われたら、大きな声で返事は出来ない。けど、母の教え通り、人様に迷惑をかけるような行いをしてきたつもりはない。
個人的な恨みでないなら、お店にとってなにか有益なことがあったから……?
「その店員は、ある人物に頼まれただけだと言ったんだ」
「頼まれた……?」
ますます訳が分からない。でも、知らないうちに、誰かを傷つけてしまっていたのだろうか。
蒼人 の苦しそうな声が、耳元から聞こえてくる。
おれが傷付かないようにと、言葉を選んで慎重に話してくれているんだと思う。
ひと呼吸を置いて、おれの身体をぎゅっと抱きしめ直した。
そして。
「その相手というのは、俺達の同級生の、佐久星司 、で──」
「……っ」
下手に先延ばしにしても仕方がないと、意を決して伝えてくれたんだろう。
ゆっくりとした口調だったのに、段々と早くなっていく。
「麻琴が初めて出来たオメガの友達だと、嬉しそうに話してくれた飯田月歌 も、グルだったんだ……」
「佐久くんと……飯田くん……まで? ……え? なんで? どうして? ……友達だって……これからもって……」
つい先日も、旅行の話をしたばかりだ。まだ出会ってからの期間は短いけど、これからもずっと付き合っていきたいと思えるほどには、信頼していた。
おれの勝手な感情で、距離を取ろうとしてしまっていたけど、心のなかではいつまでも友達だと思っていたのに。
蒼人が嘘を言ってるとは思わない。でも、嘘だよね? 間違いだよね? そう確認せずにはいられない。
抱きしめられている腕を振りほどいて、真正面から蒼人に問いただしたい。
でも蒼人は、おれを抱きしめる腕を、緩めることはなかった。
こんな事実が伝えられるとは思わなかった。想像もしていなかった。
伝えられた言葉の衝撃に、本当は取り乱していたかも知れない。
蒼人がいなければ。蒼人から伝えられなければ。
でもおれは取り乱すことなく、辛うじて話に耳を傾けることが出来ている。
やっぱりおれは、どんな時でも蒼人に守られてきたんだ……。
「カラオケボックスでのことも、喫茶店でのことも、学校でのことも、全部、佐久星司が仕組んだことだったんだ」
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