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30. 快適な治験施設 ③
蒼人はそう言いながらテーブルへとお皿を置き、百面相をしていたおれに声をかけた。
おそらく今日か明日の朝くらいには本格的なヒートに入るだろう。その前にしっかりと食事を取っておかないとならない。
おれは治験のために、この施設に来てから抑制剤の服用はしていない。なのでおそらく一週間はまともに動けなくなる。
本来ならば、初めてのヒート(薬のよる強制ではない本当のヒート)でこの実験をするには負担が大きいからと、何回かヒートを経験したあとに治験を受けることになるのだけど、おれの意思でこのタイミングで行うことを決めた。
アルファの服用する抵抗薬は、オメガのヒートに遭遇しても、理性を飛ばして自身をコントロール出来なくなる不測の事態を防ぐための薬で、フェロモンに抗い正常な判断を促す効果が期待されている。
蒼人もそれを服用しているから、不測の事態はおきないはず。
いくら両思いとは言えまだ学生なので、健全なお付き合いをしなければならないと思っている。
食事を済ませ片付けも済んだ頃、改めて蒼人が確認をしてきた。
「麻琴。……本格的なヒートが始まったら、麻琴は意識を飛ばしてしまうと思う。意識がない中で、俺は、ヒートを鎮める手伝いをすることになる。約束通り、最後まではしない。……でも、やっぱりお前が嫌だというのなら……」
この治験については、散々蒼人と話をしてきた。
薬で蒼人の理性は抑えられるとは言え、ヒート中の運命の番と一緒の部屋で過ごす。そしてそのヒートが少しでも軽くなるようにと、手伝うのだ。
正直、アルファにとっても苦行となるだろう。学生だから最後まではしないという約束の元、手伝い続けなければならない。
「蒼人こそ……いいのか?」
蒼人はおれの心配ばかりするけど、蒼人だって相当きついことになるはずだ。
「大丈夫。……俺は、産まれた時から、麻琴を守り抜くと決めている」
こんなことを言われたら、惚れ直すに決まっているだろ。
おれは、両手を広げて、思い切り蒼人の胸へと飛び込んだ。
大好きなフェロモンを思う存分吸い込むと、おれの身体がどんどん変化しているのが分かる。
ふたりきりで過ごすその時間 は、もうすぐ始まろうとしていた。
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お知らせ
いつも、「あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~」をお読みいただき、ありがとうございます。
当作品は「全年齢BL」なので、大人なシーンはありません。
ですので、次回更新はいわゆる朝チュン的なものとなります。麻琴のヒート中の描写はありません。
期待されている方もいるとは思いますが、ご了承ください🙇♀️
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