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33. 太陽に報告 ①
産み育ててくれた両親に、人生で最大の決断を報告してきた。
オメガにとって、番となる人は人生でたった一人。一度番ってしまったら、他の誰とも番えない。
近い未来に、もしかしたら番解消薬とか開発されるかもしれないけど、番の約束をするということは、オメガにとっては大きな決断であることに変わりはない。
親からすれば、ずっと大切に育ててきた子供を託せる相手なのかと不安になるのも当然だと思う。
けれど、おれ達の両親は、この報告を心待ちにしてくれたように感じた。
蒼人の父親の虹汰 さんには、『やっと思いを口にしてくれたかという気持ちだよ』って言われるし。
周りから見ても、おれ達の選んだ道は、きっと間違っていないのだと思う。
良い報告が出来てよかったなと、心から安堵した。
良い報告と言えば。
もう一人報告したい人物がいる。
両親へ挨拶をした帰り道、個室のある焼肉屋に来ていた。
挨拶に行く前日は緊張でろくに食べられなくて、無事報告が終わったら肉が食べたい! と言ったら、蒼人 は二か所へ電話していた。
一か所目は、もう一人おれ達のことを報告したい相手、天間太陽 。もう一か所は、帰り道に寄れる位置にある焼肉屋だった。
太陽は急な誘いにもかかわらず、二つ返事でOKしてくれたので、予約した焼肉屋で落ち合うことになっていた。
「蒼人、麻琴 、待たせたな」
名前負けしないような明るい笑顔は、昔から変わっていない。太陽を見ると、自然と元気を貰える気がする。
太陽は、よっと手を上げてから部屋に入り扉を閉める。
「急な呼び出しで悪かったな」
「大丈夫大丈夫。予定が何もなくて何しようかって思ってたから、ちょうど良かったわ」
そう言いながら、おれ達の向かいに腰を下ろす。
「んーで、話って?」
おしぼりで手を拭きながら、太陽は聞いてきた。おそらく、話の内容を何となく察しているのだと思う。
今回のことで、太陽にもだいぶ世話をかけたと聞いた。
治験のことも話す許可が降りたので、まずは事の成り行きを説明することにした。
「じゃあ、その新薬の治験のために、麻琴のそばを離れたっていうのか。守るための行動が、逆に危険にさらしてんじゃ、本末転倒じゃん」
お互いに心を許した相手だからこそ、容赦なく核心を突いてくる。
蒼人も自分で言っていただけあって、返す言葉もないように黙ってしまった。
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