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33. 太陽に報告 ③
おれ達距離感バグった幼馴染みを、中学の頃からすぐそばで見守ってきてくれた太陽だからこそ、この言葉の重みを感じるだろう。
「麻琴が無自覚すぎて、どうしようかと思ったよ」
太陽はそう言って、再び声を上げて笑った。
蒼人の気持ちは、おれ以外はみんな気付いていたんだろうって、今なら分かる。
太陽も、おれに思いを寄せてくれている蒼人をずっと見てきたから、もどかしかったんだろうな。
「ずっと側にいたから、気付かなかったんだよ!」
言い訳がましくおれは言うけど、今回のことで、自分の気持ちに気付けたのは本当に良かったなと思う。
ただ、もうあんな思いはしたくないけど。
……あんな思いと言えば、佐久 くんと飯田 くんはどうなったんだろう。
蒼人と話し合って、被害届は一切出さないことにした。
今回の首謀者が、友達だと思っていた二人だったから……というのもあるけど、あの二人にはちゃんとやり直してほしいと思ったから。
被害届も出さないし告訴もしないから、これ以上の詳しい動機は分からないままだけど。
「……あの二人、もう間違わないでほしいな……」
「そうだな……。結局のところ、飯田のためってことだよな。……やり方を間違えただけで」
学校での騒ぎのあと、飯田くんから聞いた話によると、佐久くんは婚約者の飯田くんがひとり寂しそうにしているのをずっと気にしていて、友だちを作ってやりたいと思ったのが、ことの始まりだったらしい。
ただそれがなぜあんな大事にまで発展したのかは、本人が固く口を閉ざして話そうとしないらしい。
今回使われた薬などは、佐久くんの親の会社が関わっているので、そちらについては捜査の手が入るのだと思う。佐久くんも使用した罪に問われるのか、親から渡されたということで、罪にならないのかは分からない。
ただ、アルファ至上主義の社会は変わらないので、もしかしたら見えない力がはたらいてしまうのかもしれない。
こんな騒ぎを起こしたのだから、婚約は解消だと飯田くんの親は言っているらしいけど、飯田くんが頑として首を縦に振らないでいると聞いた。
佐久くんの側にいて、支えていくつもりなのだろうか。
どちらにしろ、二人で反省して、ちゃんと前を向いて歩んで欲しい。
そしていつか、また笑って会える日が来たら良いなって思う。
チラリと蒼人を見たら、うんって小さく頷く。
「いつか……今度は俺も一緒に、五人で出かけられたら良いな」
本当なら、おれを傷付けた相手なんて許したくないのかもしれない。……でも蒼人は、おれの心が少しでも軽くなるように、希望ある言葉を紡いでくれた。
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