98 / 107

番外編 七夕 1(蒼人視点)①

 カレンダーを捲り七の数字を確認すると、もう今年も半分過ぎてしまったのだと実感する。  梅雨時期のはずなのに、外は雲ひとつない晴天で、お出かけ日和だ。それでも、午前中なのにグングン上がる気温に、外へ出かける気分にはなれずにいた。 「なぁ、ケン○ッキーっていつ食べるもんだと思う?」  エアコンのきいた涼しい部屋で、最愛の人を膝に乗せたまま、なんとなくテレビをつけたまま他愛もない会話をしていた。  そんな中、なんの脈絡もなく突然麻琴(まこと)が聞いてきたのは、ケン○ッキーはいつ食べるのか問題。 「クリスマスとか……?」 「クリスマスならさ、ターキーレッグとかの方がテンション上がらないか?」 「じゃあ、誕生日とか?」 「おれ、焼肉とかお寿司が食べたいな」  麻琴はさり気なく自分の食べたいものを挟み込んでくる。基本的に好き嫌いが少ないから、今の気分は焼肉とかお寿司なのだろう。 「ケン○ッキーは、普段のお昼とか?」 「チキン○ィレサンドセットならわかるけど、チキンだけ買いにいくってあまりないと思わないか?」 「うーん、そう言われてみればそうだなぁ……」  俺がうーんと考えながら、次の返答への間を開けていると、麻琴がすっくと立ち上がり、くるりと姿勢を変えこちらを見た。 「今日ケン○ッキーにしなぁい?」  何故か自信満々の態度で、テレビのCMと同じ口調で言う。きっと俺が笑ってくれると思ったのだろう。 「今日ケン○ッキーにしない……?」  麻琴の期待に反して、俺は麻琴の言葉を繰り返すのみの反応となってしまった。  麻琴がやりたかったことは、薄々感づいてはいた。数日前から、やけにテレビでCMを見かけていたからだ。クリスマスだけではなく、他のイベント日のパーティーなどにいかがですか?……というやつらしい。 「蒼人(あおと)、ノリ悪いなぁ」  ぷーっとふくれっ面になる麻琴が可愛い。  麻琴の期待には応えられなかったけど、拗ねる麻琴が見れる俺は役得だ。  麻琴は笑っても可愛いし、怒っても可愛い。……泣いても可愛い。

ともだちにシェアしよう!