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番外編 おでこにキス(蒼人視点)③

「麻琴、こっちにおいで」  俺はソファーへ腰を降ろすと、手招きをした。膝をポンポンっとしなくても、スススーッとやって来て、ポスンと俺の膝へ着地した。 「俺はまだ学生だし、親の援助を受けないと生活していけない。本当は今すぐにでも麻琴と結婚して家族になりたい。……いつか、この写真のように、みんなの祝福に包まれて結婚式をあげたい」  俺の言葉に、こくこくと首を縦に振る。  俺の付けた噛み跡が、ほんのり赤くなったような気がした。  その印に唇でそっと触れると、それに答えるかのように、ビクリと麻琴の身体が震えた。  俺は何度も確かめるように、うなじの印を吸い上げる。 「んっ……」  麻琴の口元からわずかに漏れた吐息を合図とし、俺達はそのままソファーへ倒れ込んだ。 ◇ 「結局、犯人は太陽だったってことだな?」  俺の言葉に、麻琴はクスクスと笑う。 「犯人だなんて、ひどい言い方だなぁ」  結局あのあと俺達はさらにベッドへ移動して、今に至る。気付くと辺りはすっかり暗くなっていた。  ベッドの中で後ろから麻琴を抱きしめたまま、先程の写真の話をしていた。 「どうせ太陽のことだから、オレに任せとけとか言ったんだろ」 「当たり! 良くわかったね?」 「太陽が考えそうなことだ」  楽しいこと大好きな太陽は、学内外のイベント企画なども請け負うほど、ひらめきや発想が人より長けていて、それをしっかりと形にする企画力も併せ持っている。  麻琴が相談したことにより、クラスメイトの協力を得て、ドラマみたいなシチュエーションでのキス写真を撮ることに成功したのだろう。  少々呆れつつも、俺達の思い出作りに協力をしてくれたということで、一応感謝しておこうか。 「あそこで俺が、キス以上のことをしたらどうするつもりだったんだ?」  俺の意地悪な問いかけに、麻琴は「ふぇっ?!」っと変な声を出した。 「キ、キスいじょっ……?!」  抱きしめた腕の中にいる麻琴が、動揺のあまり落ち着きがないようにもぞもぞと動く。 「そ、そんなこと、学校でするわけない、だろっ?! ……そういうのは、家に帰ってから、でっ!」  麻琴は慌てながらそんなセリフを言うけど、無自覚に煽っているということに気付かないのだろうか。  まさに今、その『家にいる時』なのに。  一度静かになった俺の心も体も、麻琴を欲して再び熱を持ち出したことに、まだ麻琴は気付いていない。 (終)

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