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番外編 おでこにキス(蒼人視点)②

「……はっ?!」  これは麻琴に、『学校での思い出を作りたいから、屋上へ続く階段に行きたい』と言われ、何をしたいのだろうと?と思いながら付いていった時の写真だ。  漫画やドラマでよく見る、人気の少ない階段の踊り場などで、人目を忍んで恋人同士などがキスをしたりするのを、卒業前にやってみたかったのだと言った。  そんな可愛いことを言われたら、叶えてやるしかないじゃないか。  二段ほど高い位置に立ち止まった麻琴は、くるりとこちらを振り返ると、花でも咲いたかのような笑顔を向ける。 「蒼人、大好きっ」  そして、ちょっと恥ずかしそうな照れた表情になると、麻琴は俺のおでこにチュッとキスを落とした。 「あの時の写真?!」  卒業式の時の可愛い麻琴を思い出しながら、俺は驚いた声をあげた。周りには誰もいなかったはずだ。 「たまたま通りかかったKくんが、おれ達に気付いて撮ってくれたんだって」  ……?  Kは確か写真部だったはずだ。それに加え、某テーマパークでダンサーがキレイに撮れるようにと、バズーカのような望遠カメラも持っていたはずだ。教室で自慢していたのを見たことがある。  ……ということは、そこを通りかかる可能性よりも、俺達がそこにいるのを知っていて、撮った可能性の方が高いだろう。  一歩間違えれば、犯罪だ。  麻琴が写真のことまでは知らなかったのは、本当だと思う。  大方誰かに、思い出に高校生っぽいことをしようと誘われたか、麻琴自身が言い出したかのどちらかだろう。 「おれが太陽(たいよう)に、高校最後の思い出作りをしたいから何かないかなって相談したら、ドラマみたいなシチュエーションでって、提案されたんだよ」  ──犯人はお前か、太陽!!  麻琴が写真のことまでは知らなかったのは、本当だと思う。ただ単に、学生らしいシチュエーションを体験させてやるとでも言ったのだろう。 「この写真、まるで結婚式みたいじゃないかって言われたんだ。そう思って見ると、ほんとにそう見えてきて……」  麻琴はそこまで言うと、急に照れたようにもじもじすると、ちょっと背伸びをして、素早く俺のおでこにチュッとキスをした。  おでこにキスくらいで、こんなに照れる麻琴が可愛い。  俺達はもうそれ以上の関係だし、心も体も深く深く愛し合っている仲だ。はじめは何も知らずに戸惑い恥ずかしがっていた麻琴も、身体を重ねる毎に、少しずつ俺との行為に慣れてきているはずだ。  それでも、こうやってほんの少しのキスに照れてもじもじとする姿が、本当に愛おしい。

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