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番外編 シーツ(ほんのりR)②
おれが声をかけると、額に汗をかいた蒼人が動きを止め、ハァハァ吐息を切らせながらも、ニッコリと笑いかけてくれた。
「まこと、愛してる……」
蒼人は宝物に触れるように優しく唇に触れると、再び律動を開始した。
どんどんスピードを上げる腰の動きに、再び意識を持っていかれそうになる。
与えられる快楽という名の刺激に、おれはもう言葉にならない声を発し続けるしか無かった。
「まこと……っ!」
一段と動きが早まり、もう一度蒼人がおれの名を呼ぶと、奥深くに熱いものが流れ込むのを感じた。
こんなに、幸せでいいんだろうか……。
ハァハァを呼吸を整える蒼人の頬にそっと手を当て、ふにゃりと微笑んだ。
「あおと……」
最愛の人の名をつぶやくと、そのままスーッと意識を手放した。
目が覚めると、おれは一人シーツに包まって寝ていた。
ボーっとする意識の中で、自分の置かれている状況を整理しようとシーツから顔を出すと、ベッドの上にはたくさんの蒼人の服が散らばっていた。
ああ、そうだ。
ヒートが来た時ちょうど蒼人がいなくて、帰りを待つ間に迎え入れるための巣作りをしていたんだ。
もうすぐヒートが来るだろうと蒼人が感じ取っていたから、巣に使えるものをたくさん用意してくれていた。
何度作っても、まだ完璧と言えるものは作れないけど、徐々に上達していると思うんだ。
完成して、蒼人を迎え入れて、一緒に過ごすことが出来た。
まだハッキリしない意識の中、シーツに包まったまま体を起こす。
こんなに幸せなことがあって良いのだろうかと、しばらくぽーっとしながら幸せに浸っていると、部屋のドアが開いて蒼人が入って来た。
「麻琴、起きたか」
上半身裸のまま、タオルで頭を拭きながらやってくると、ベッドの上でボーっとしたままのおれの横に腰掛けた。
「麻琴もシャワー浴びるか?」
蒼人の言葉に、おれはふるふると首を横に振った。
まだヒートが完全に明けていないからなのか、ただ単に蒼人にそばにいてほしいだけなのかわからないけど、人恋しい。……ううん、蒼人が恋しい。
おれは、そっとうなじの番の跡に手を触れると、何度目かの幸せを噛み締めた。
ヒートの時は、いつもに増して甘えん坊になる。そんな麻琴が可愛いと、蒼人は言う。
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