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3.
朝食を終え、再び部屋に戻ってきた時のこと。
部屋に入った途端、ぺたんと座る二人のことをよそに先ほどのことを振り返る。
それぞれ用意された食事を前にお行儀よく座ったまではいい。ところが、二人とも食事に目を向けるだけで一向に食べる素振りを見せない。
「食べたくないの?」と訊くとほぼ同時に小さく頷いた。
二人も病み上がりなのもあるが、根底は母親のことが気になって食べる気にもならないからだろう。
「食べたくないのは分かるけど、少しでも食べないとまた風邪を引いちゃうよ」
「かぜになっちゃったら、おかーさまがかわいそう⋯⋯」
「じゃあ、食べないとだね」
「でも⋯⋯たべたくない⋯⋯」
今にも泣きそうに瞳を潤ませる二人に、どうしたものかと頭を抱えた。
葵がいる時、この二人がここまで落ち込んだことがなく、むしろ積極的に自ら食べたり、食べさせてもらおうとしていた。
こんな時、葵ならばどう食べさせようとするのか。
二人の間に座り、笑いかける葵のことを思い浮かべながら少し考えた時、閃いた。
「新、真。一口、このスプーンに乗せた分でいい。それだけを食べたらごちそうさまをしようか」
「いいの?」
「いいよ。無理して食べて吐いてしまうかもしれないしね」
「じゃあ⋯⋯まー、がんばる」
「あーも」
そのぐらいなら、食べられると意欲を示した二人にそれぞれスプーンを持たせて、いただきますをした。
ほぼ同時にスプーンですくったものをじっくりと見つめる様子に、やはり食べる気がないのかと思った時、ぱくっとやや勢いで口に運んだ。
「新、真。食べてえらい」
それぞれにそう言って頭を撫でると褒められて嬉しくなったようで、また一口、二口と食べ進めた。
この勢いだったら大丈夫そうかと、食べる手が止まらない二人を尻目に自分も食べ始めた。
呆然と座り込む二人を見て、やはりあのぐらいじゃ気が向くわけないかと次のことを考え始めた。
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