5 / 13
5.
「んー⋯⋯お父さまは一人だからせめて順番で遊ぼうか」
「じゃあ、あーたから!」
「やっ! まーから!」
おっと、これは。
「あーが!」「まーが!」と二人が言い合いになっている。
この場面はよく見る光景だ。
葵と喧嘩──碧人にとっては、喧嘩とも思ってないが──はしたことはあるが、このような喧嘩をしたことがないため、これは双子として産まれた新と真の性格ゆえか。
葵もよくまあ、この二人を一日中相手にしていられるなと感心する。
母親として自覚しろと言ったのはこっちだが、なにもそこまで責任を持たなくていいのに。
どっちにしろこの二人とは長く一緒にいられないのだから、この二人の世話はその辺の使用人でも任せて、自分の時間か碧人と一緒にいる時間に充てればいいものを。
「分かった。じゃあ、新、真。二人一緒に遊んであげるから」
「やったー!」
「あー、ボールなげるー!」
大喜びした二人は、新は距離を取って早速ボールを投げ、碧人のすぐそばでは真が寝そべってお絵描きをし始めた。
意外と同時にいけそうだ。
頭上に掲げて、大きく振りかぶり、遠くに飛ばしているつもりの新からのボールがゆっくりと転がっていくのを受け取り、新の方へボールを転がしつつ、鼻歌混じりに歌う真のことをちらりと見た。
と、真の描く絵を少々見ることとなった。
短く黒い髪に最初、碧人のことを描いてくれているのかと思ったが、服装や黒手袋をしていることから、葵人のことを描いているのだと確信した。
母のことを忘れさせようとしたが、これでは思い出してしまう。
しかしここまでとは。
ともだちにシェアしよう!