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7.
思わず失笑していた碧人は、二人の世話は使用人に任せ、そろそろ葵の元へ行くかと思った時だった。
「おとーさま!」
「おうた、うたってー!」
「え⋯⋯」
無邪気に言う二人のまさかの要望に目を丸くした。
「歌⋯⋯? えっと、何を歌えばいいのかな?」
「んっと⋯⋯なにする?」
「んー⋯⋯なににしようかな⋯⋯」
どうしようかと首を傾げる二人に、ただ思いつきで言っただけなのかと小さく笑った。
二人がこうやって歌を要望してくるということは、葵は普段でもよく歌ってあげているのだろう。
寝る前、歌ってあげているのを見るが、そういえば、昔ある歌手にすごくハマっていた頃があり、それをよく口ずさんでいるのを、本人に気づかれないように聞いていたことを思い出す。
ある日そのことに気づかれてしまって以来、聞けずにいたが、また葵の素敵な歌を聞けるのは嬉しく思う。
それは自分に対してではなく、子ども達に対してというのが少々引っかかる点ではあるが。
と、そこで碧人は思いついた。
「お母さまが寝る前に歌ってる歌でも歌ってあげようか」
「「うん!」」
二人は大きく頷いて、期待の眼差しで見てきた。
こうも見られると少々恥ずかしくも思うが、それを紛らわすように咳払いした後、歌った。
「⋯⋯どうかな?」
葵が歌う時は、二人は途中で寝にいっているようで、恐らく今のように最後まで聞いたことがないはずだ。
そういう意味も含めて、歌い終わった時そう訊ねる。
小さく口を開けてじっと聞いていた双子は、そう聞かれるや否やはっとしたような顔をして、声を上げた。
「すご〜い!」
「おとーさま、じょーず!」
ぱちぱちと拍手までして歓声を上げる。
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