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思わず失笑していた碧人は、二人の世話は使用人に任せ、そろそろ葵の元へ行くかと思った時だった。 「おとーさま!」 「おうた、うたってー!」 「え⋯⋯」 無邪気に言う二人のまさかの要望に目を丸くした。 「歌⋯⋯? えっと、何を歌えばいいのかな?」 「んっと⋯⋯なにする?」 「んー⋯⋯なににしようかな⋯⋯」 どうしようかと首を傾げる二人に、ただ思いつきで言っただけなのかと小さく笑った。 二人がこうやって歌を要望してくるということは、葵は普段でもよく歌ってあげているのだろう。 寝る前、歌ってあげているのを見るが、そういえば、昔ある歌手にすごくハマっていた頃があり、それをよく口ずさんでいるのを、本人に気づかれないように聞いていたことを思い出す。 ある日そのことに気づかれてしまって以来、聞けずにいたが、また葵の素敵な歌を聞けるのは嬉しく思う。 それは自分に対してではなく、子ども達に対してというのが少々引っかかる点ではあるが。 と、そこで碧人は思いついた。 「お母さまが寝る前に歌ってる歌でも歌ってあげようか」 「「うん!」」 二人は大きく頷いて、期待の眼差しで見てきた。 こうも見られると少々恥ずかしくも思うが、それを紛らわすように咳払いした後、歌った。 「⋯⋯どうかな?」 葵が歌う時は、二人は途中で寝にいっているようで、恐らく今のように最後まで聞いたことがないはずだ。 そういう意味も含めて、歌い終わった時そう訊ねる。 小さく口を開けてじっと聞いていた双子は、そう聞かれるや否やはっとしたような顔をして、声を上げた。 「すご〜い!」 「おとーさま、じょーず!」 ぱちぱちと拍手までして歓声を上げる。

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