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8.
「そうでもないよ。お母さまの方が上手いし、僕はそれを真似して歌っているだけ」
「でも、うれしそう」
新にそう言われた。
顔に出ていたか。それもそのはず、葵の歌う姿を思い浮かべていたからだ。
新は褒められて嬉しそうにしているのだと思っているのだろうけれども。
「おかーさま、ちゃんとねれる?」
「寝ていると思うよ」
「まーたちが、おうたうたったら、げんきになる?」
「きっとそうなるけど、今は一人で寝かせてあげようね」
「二人がまた風邪になるから」と再度念押しをする。
が、二人は納得してないようで、眉間に皺を寄せた。
これは拗ねているのではなく、恐らく⋯⋯。
「⋯⋯おかーさまに、あいたい」
「⋯⋯あいたい⋯⋯」
瞳を潤ませる。
これは、まずい。
そう思った直後、二人は声を上げて泣き出した。
また振り出しか。
碧人は内心ため息を吐いた。
二人を抱き寄せ、よしよしと頭を撫でて慰めてみるが、一向に落ち着く様子はなく、さらに声を上げて泣く始末。
面倒だ。やはり、元から使用人に任せて自分は葵の元に行ってれば良かった。
しかしそうすると、葵が子ども達のことを心配して意地でも来てしまうから、葵だけで普段世話をしているし、少しでも面倒をみようと思った。
今からでも任せてしまおうかと思いつつ、周りを見渡してみる。と、真が描いた絵が目に止まる。
「新、真。よく聞いて。二人が歌を歌ってあげには行けないけど、さっき真が描いたみたいに絵とかおりがみでお母さまを元気にしてあげよう」
「⋯⋯おかーさま、それでげんきになる⋯⋯?」
「きっと元気になる。だって、新と真のこと大好きなのを知っているでしょ?」
「うん⋯⋯」
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